2006 Fiscal Year Annual Research Report
日仏美術交流史研究 -ジャポニスム、コラン、日本近代洋画-
Project/Area Number |
17320024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 篤 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10212226)
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Keywords | 美術史 / 美学 / 芸術諸学 / ジャポニスム / アカデミスム / 19世紀フランス絵画 / 交流史 / ラファエル・コラン |
Research Abstract |
本年度は、「ラファエル・コランと日本」の問題に取り組んだ。 ラファエル・コランの日本美術コレクションの調査に関しては、リヨン美術館(陶磁器)、ギメ美術館(屏風、面)に残された旧コラン所蔵作品を主たる対象とした。それ以外の所蔵品は、コランの生前に出版された画集やコランの死後行われた売り立て目録などを通して、屏風や刀の鍔などさらにいくつか把握することができた。 コランの作品に表れたジャポニスムに関しては、主題、モチーフのレベルではあまり濃厚ではなく、むしろ構図、色彩、マチエール、人物表現、さらには美意識のレベルまで、日本美術との同質性が感じられる。コラン作品としては、フランス(オルセー美術館、アラス美術館、ベルフォール美術館等)や日本国内(東京芸術大学大学美術館、島根県立美術館、府中市美術館等)に所蔵される主要作品を調査した。 コラン自身が発した日本美術に関する言葉の探索も重要だが、コラン関係資料がまとまって存在しないので、コランの友人や弟子たち(フランス人、日本人を含む)が残した批評文、回想文の中から、日本美術に関する画家の感想や判断を示す言葉をある程度抽出することができた。それによると、茶道具として使われる渋い日本の焼き物の色合いへの執着、春信への飛び抜けた愛着と評価などが伺われた。 その結果、コランが集めた日本美術は屏風、掛け軸、浮世絵、刀の鍔、お面など様々だが、特に春信、琳派、焼き締め陶器などを好んだのは、コラン作品にも見られる優美さや繊細さ、平面的な装飾性、淡く柔らかな色彩などと共通する美的特質のためだと結論づけることができた。これは当時の画家としては、印象派などとは性格の異なる異色のジャポニスムの在り方だと言えよう。
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Research Products
(4 results)