Research Abstract |
最終年度は,まず今後の研究方向の展望を得るため,小澤はオーストリアとハンガリーの境界多民族地域である西ハンガリー・ブルゲンラントの微視的分析に取り組み,京都で開催された国際シンポジウムで報告を行った。また,世界の構造化の分析を古典的自由主義の再検討から行うため,自由主義の排他性や帝国的自由主義の分析を行い,学会報告を行うとともに論文として発表した。大峰は商業ネットワークを基礎とする地域間関係の分析をまとめ,秋葉はオスマン帝国の行政構造を中心=周縁関係から解明する報告を行い,上村は図像表象の差異からイタリアルネサンス期の中心=周縁関係を検討した。また,後藤は国民国家体系の制度化と捉えられる国際連盟の分析に取り組んだ。また,九州大学で博士号を取得した若手研究者を招き,ウィーンとシュタイアーマルクの比較研究からハプスブルク帝国内部の不均等発展の問題を検討した。研究ネットワークの形成という観点からは,秋葉がカナダで開催された北米中東学会に参加し,小澤がイギリスの現地調査を踏まえて研究動向を精査した。また,千葉大学の博士研究員をフランスに派遣し,南フランスの地域史を通じて,周縁の位置と民衆運動との関係について調査を依頼した。国内では北海道大学,大阪大学,京都市国際交流会館において研究交流を行った。また,千葉大学にドイツから招聘した研究者と,ドイツにおけるユダヤ問題をめぐって討論を行った。 研究文献データベースの作成作業については,新たにブルゲンラント地域史を追加しつつ,最終とりまとめの段階にあり,近く公開を予定している。
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