2005 Fiscal Year Annual Research Report
権利・利益の実効的救済手段としての「仮の救済」についての実証的・総合的研究
Project/Area Number |
17330004
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笹田 栄司 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20205876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亘理 格 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (30125695)
大貫 裕之 中央大学, 法科大学院, 教授 (10169021)
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Keywords | 仮の救済 / 裁判を受ける権利 / 司法権 / 訴訟非訟二分論 / 手続的正義 |
Research Abstract |
本研究は「仮の救済」の理論的及び実証的検討を目指しているが、初年度にあたる平成17年度では、次のような成果を得た。まず、研究会において、毛利透京大教授「『法治国家』から『法の支配』へ?」、そして、高木光学習院大教授「行政事件訴訟法改正と今後の展望」が報告された。次に、実証的検討については、諌早湾干拓工事差止訴訟の弁護団長(馬奈木弁護士)にヒアリングを行い、現地調査(長崎県職員からの説明を含む)に及んだ。ところで、「仮の救済」については、それが本来、司法作用に属するのか、行政作用に属するのかについて争いがあった。現在では司法作用と一般に解されているが、憲法32条及び82条の「裁判」に関し最高裁判例の採る訴訟非訟二分論に立つ限り、それと整合的しないところがある。つまり、決定・審尋・非公開という手続を採る「仮の救済」については訴訟ではなく非訟と評価されないか、ということである。この問題の検討にあたっては、裁判及び司法権概念、そして裁判を受ける権利の分析が不可欠である。笹田「裁判を受ける権利の発展可能性(一)(二・完)」はそのための基礎作業であり、民事・行政裁判手続における手続保障は三つの最高裁判例で足りているのか、あるいは、裁判を受ける権利の「代替物」が存在しているのか、について検討を加え、判例には「手続的正義」の枠組みを用いて訴訟当事者の権利主張の機会を確保しようとするもの、また、「国民の司法救済の道を不当に閉ざす」か否か、及び、「訴訟に関与する機会」が付与されたかどうか、が判決のポイントとなるものがあることを示した。「当事者の憲法上の権利」という構成を最高裁が回避している点がこれらに共通している。「仮の救済」の憲法的基礎づけを考える場合、裁判を受ける権利も選択肢の一つと考えるが、その際、裁判を受ける権利の権利性を確かなものとし、さらに訴訟非訟二分論を克服することが必要である。
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Research Products
(6 results)