2006 Fiscal Year Annual Research Report
権利・利益の実効的救済手段としての「仮の救済」についての実証的・総合的研究
Project/Area Number |
17330004
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笹田 栄司 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (20205876)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亘理 格 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (30125695)
大貫 裕之 中央大学, 法科大学院, 教授 (10169021)
村上 裕章 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (20210015)
赤坂 正浩 神戸大学, 大学院法学研究科, 教授 (80167816)
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Keywords | 内閣総理大臣の異議 / 仮処分 / 緊急事態法制 / 行政事件訴訟法改正 / 平野事件 / 仮の救済 |
Research Abstract |
(1)今回の行訴法改正では、違憲の疑いが濃厚とされていた「内閣総理大臣の異議」(以下、「異議」とする)は変更されていない。「国民の重大な利益に影響を及ぼす緊急事態等への対応の在り方や三権分立との関係」を検討する必要が指摘されたのである。「異議」は、1948年1月14日に公職追放指定処分を受けた平野衆議院議員が東京地裁に公職追放の効力発生停止の仮処分を申請し、同地裁が同年2月2日にそれを認めたため、連合国総司令部の強い意向をうけ行政事件訴訟特例法に規定された。行政事件訴訟法制定の際には、「異議」廃止を巡り激しいやりとりがあったが、存置されている。その根拠は次の二点に集約される。(1)「仮の処分的な執行停止は固有の司法権の作用」ではないのでの「異議」によって制限を設けても司法権の侵害とならない、(2)非常事態のような「極めて例外的な場合」に限って行政の究極的責任者としての内閣総理大臣の判断を優先させる余地を残してしかるべき。 (2)(1)については、裁判所による執行停止を「固有の司法権の作用」とする見解が大勢となった現在では存置論の根拠として主張されえない。そうすると、「異議」の廃止、あるいは「異議」を憲法に適合させるための変更という選択肢が残る。地裁の執行停止決定に対する即時抗告について抗告審が迅速に審理・判断する運用が行われていることから、「異議」の必要性は少ないとみることもできる。ただ、行政文書不開示処分取消請求事件において、特定の文書の提出が仮の義務付け(行訴法37条5第1項)によって可能となるならこれによって文書が閲覧され、被処分者にとり「満足的執行停止」となろう。そこで、「国の安全等に関する情報」等(情報公開法5条3号)が関係する場合、「異議」を存続させることも考えられるが、それでは憲法上の問題は解消されない。そこで、「異議」を廃止するとしたうえで、上記ケースについては即時抗告に執行停止効を認めることが検討されねばならない。
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Research Products
(10 results)