2007 Fiscal Year Annual Research Report
社会保険における構造改革の国際比較分析と規範原理の再構築に関する研究
Project/Area Number |
17330013
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
河野 正輝 Kumamoto Gakuen University, 社会福祉学部, 教授 (70032703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 和光 久留米大学, 法学部, 教授 (80175900)
高倉 統一 熊本学園大学, 社会福祉学部, 准教授 (90253385)
西田 和弘 岡山大学, 法学部, 教授 (70284859)
石田 道彦 金沢大学, 法学部, 教授 (10295016)
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Keywords | 社会保険 / 非正規雇用労働者 / 擬似自営業者 / 被扶養配偶者 / 保険原理と扶養原理 / 職域連帯と国民連帯 / 租税代替化 / 「第三の道」理念 |
Research Abstract |
諸外国の改革動向から見て、社会保険の伝統的な道具概念に変容が認められるのは、(1)まず被用者概念は常用のみを指す伝統的な取り扱いを改め、常用と非常用との差別を禁止するという原則の転換が認められる。(2)被用者と自営業者を峻別する伝統的な取り扱いも改め、形式上の擬似自営業者を被用者の区分し、国によっては被用者と自営業者の区別そのものを廃止する例もある。(3)非正規労働者が短時間・低賃金であるため事実上社会保険へのアクセスが制限される問題を緩和するため、年金保険上の拠出要件の緩和、育児・介護期間の保険料免除と受給資格期間への参入、最低保障年金の創設などの変容がみられる。(4)主婦を被扶養配偶者とする伝統的世帯単位の概念を改め、性または家庭における地位に基づく差別として禁止そる、原則の転換がある。(5)夫の拠出に基づく遺族年金を給付する世帯単位を改め、遺族年金を老齢年金から分離して独立の個人単位の社会保険方式を創設する例もある。(6)労使による保険料のみを財源としてきたビスマルクモデルの国でも「保険になじまない医療」の概念や一般社会拠出金などを導入することにより、租税代替.化が図られている。 こうした社会保険改革の動向と「第三の道」理念との関連性を見ると、「第三の道」理念は伝統的な社会保険の基礎と通底している面を有し、かつ社会保険改革を部分的に領導している面を有していることが認められる。特に「第三の道」が掲げるresponsibilityの強調やその政策指針としてのcontractualismは社会保険改革においても基本理念として重要視されていると考えられる。その反面、租税代替化の動向など、「第三の道」とは逆に所得再分配の拡充を図る動きも見られる。したがって引き続き理念と改革の関連性についてフォローする必要があると考えられる。
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Research Products
(4 results)