2006 Fiscal Year Annual Research Report
更正保護法制転換期における社会内処遇の発展方向に関する総合的研究
Project/Area Number |
17330014
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土井 政和 九州大学, 大学院法学研究院, 教授 (30188841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武内 謙治 九州大学, 大学院法学研究院, 助教授 (10325540)
金澤 真理 山形大学, 人文学部, 助教授 (10302283)
佐々木 光明 神戸学院大学, 法学部, 教授 (70300225)
正木 祐史 静岡大学, 人文学部, 助教授 (70339597)
渕野 貴生 静岡大学, 法科大学院, 助教授 (20271851)
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Keywords | 更生保護 / 社会内刑罰 / 社会復帰 / 保護観察 / ネットワーク |
Research Abstract |
平成18年度は、(1)「犯罪行為者社会復帰法(仮称)要綱案」作成のための論点整理をまとめた「理論的検討」の公表のため、17年度よりすすめてきた『更生保護制度改革のゆくえ』の出版による、あるべき社会内処遇についての基本的視座の提言、及び(2)17年度に実施した韓国の更生保護施設訪問調査をまとめるため、韓国の更生保護実務家、研究者を招いた国際シンポジウムの開催を中心として研究を進めた。 (2)については、18年11月に福岡サンパレスホテル&ホール(福岡市)において、「日韓社会内処遇シンポジウム-共に生きる明日へ」を開催した。韓国から尹龍奎・江原大学法科大学教授、呉英根・漢陽大学校法科大学教授、成雨濟・法務部保護局少年第2課長、金英順・韓国更生保護公団本部保護チーム長を、国内からは安形静男・宮崎産業経営大学法学部教授(元保護観察官)をシンポジストとして招き、本研究分担者からは、土井および佐々木がシンポジストとして、崔が全体通訳として、正木が総合司会として参加した。各報告は広範囲にわたっており、活発な議論が交わされた。報告内容は当日配布の報告集に収録されているほか、同報告集には、韓国の更生保護施設訪問調査の成果と日本の更生保護施設訪問調査の成果が収められている。本シンポジウムは、韓国調査の成果を具体化するのみならず、それと国内調査を対比させて日韓の社会内処遇のあり方について比較検討することにもつながった。韓国では、一般成人の犯罪者を対象とした保護観察制度の歴史が浅く、保護観察の実施の点については、指導監督と補導援護を一体として捉えることによりケースワーク機能を果たそうと実務的努力が重ねられてきた日本のあり方に一日の長があると思われる一方、例えばボランティアの活動などの点においては、韓国の方がその基盤が充実していると思われるなど、日本の更生保護制度の特色・長短を浮かび上がらせるに十分なものとなった。 (1)については、17年度までの作業に引き続き各原稿の検討を行い、現在校正中であり、19年度初頭に発刊予定である。同書においては、複数の重大事件をきっかけに誕生した有識者会議がその提言に注目すべき点を含む一方で、監視強化の方向性をも内包したものとなっており、指導監督と補導援護を統合し、援助とケースワークを基本に実施してきた従来の実務動向と相反するものと評価でき、そこに欠けているものは、一貫した社会的援助の理念と、保護観察対象者の法的地位の検討、国際準則の考慮であることを指摘している。以上の総論を基礎として、生活再建のために必要な措置は何か、更生保護施設はどのようなものであるべきかを検討し、また、実効的な更生保護制度のためのネットワークのあり方、現代的な課題としての被害者問題、身上公開制度、電子監視や社会奉仕命令についても扱い、少年法の関連にも触れている。その検討において、アジア諸国の状況や法制審議会への諮問第77号にも対応した。
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Research Products
(6 results)