2005 Fiscal Year Annual Research Report
行動ファイナンスに関する実証研究-企業と家計のファイナンス行動のパズルの解明-
Project/Area Number |
17330088
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
城下 賢吾 山口大学, 経済学部, 教授 (20183840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榊原 茂樹 神戸大学, 大学院・経営学研究科, 教授 (10030719)
砂川 伸幸 神戸大学, 大学院・経営学研究科, 助教授 (90273755)
佐々木 一郎 広島経済大学, 経済学部, 助教授 (60330651)
清水 一 高松大学, 経営学部, 講師 (50368841)
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Keywords | 行動ファイナンス / アノマリー / 気質効果 / 半年効果 / 年金未加入 / R&D投資 / リストラクチャリング / 4ファクターモデル |
Research Abstract |
城下は、株価が参照点、たとえば、購入価格と比較して値上がりすると早く売りたがり、値下がりすると、購入価格の戻るまでなかなか売りたがらないという傾向である気質効果の検証を行った。気質効果を検証するために、仮想の株式市場を作り、その中で被験者に売買してもらい、その取引履歴を分析した。3つの検証が行われた。1つは同じ3つの株式を自由に売買してもらうことによって気質効果が存在するかを観察することである。検証2,3では被験者がそれぞれに異なる5つの株式を売買してもらうことによって、気質効果が長期間(1年間)にわたっても持続するかどうかを観察するものである。検証2,3の違いは前者が現物取引で、後者が信用取引である。検証結果によれば、被験者は気質効果を示す傾向にあった。特に、参照点と比較して値下がりした株をなかなか売却できない傾向が観察された。しかしストップロス注文をつけることでその効果を大きく減らすことができた。また、気質効果が強い被験者のパフォーマンスは悪かった。 榊原は過去の検証で発見した日本の株式投資収益率に見られる半年効果が、すでに発見されている小型株効果やバリュー効果と独立して存在する現象であるかどうかを検証した。検証結果によれば、半年効果はすでに発見されたアノマリーとは独立した効果であること報告している。また、3ファクターモデルに半年効果を加えた4ファクターモデルを提案している。 砂川は企業の無形資産を形成する代表的な投資であるR&D投資に注目し、株式市場の評価についての先行研究を紹介している。実証結果によると、R&D投資は企業価値や株式収益率に有意な影響を与えている。株式市場は、R&D投資を将来の収益につながる投資とみなし、同時に成長オプションの源泉だと考えているようだ。 佐々木は若年世代の年金不信が国民年金未加入行動にいたるかどうかを大学生にアンケート調査することによって分析した。検証結果によると、未加入行動に対して、国民年金制度への信頼感や不信感という、制度要因の影響は認められなかった。年金不信は未加入率には影響しないことが示唆された。むしろ、未加入行動に影響するのは制度要因ではなく、近視眼的傾向の有無、老後の備えの必要性に対する考え方の違いなど、個人サイドの要因が深く影響しているように思われる。 清水は企業のリストラクチャリングと財務パフォーマンスの関係について最新の論文をサーベィしている。この問題を考察する際、日本企業のダウンサイズ行動後の財務パフォーマンス改善が評価に関する研究は数少ない。この論文はリストラが財務パフォーマンスにどのような影響を与えたかを調べるための出発点である。
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Research Products
(5 results)