2005 Fiscal Year Annual Research Report
変動期における労働協約の日韓比較-自律的な「秩序形成」過程の特微と課題-
Project/Area Number |
17330110
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
上井 喜彦 埼玉大学, 経済学部, 教授 (90134329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
禹 宗うぉん 埼玉大学, 経済学部, 教授 (50312913)
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Keywords | 労働協約 / 日韓比較 / 雇用慣行 / 労使関係 / 変動期 / 秩序 |
Research Abstract |
本研究は、イ)政治的変動期(日本は終戦直後から1950年代、韓国は1980年代後半から1990年代まで)における労働協約の成立・変化の過程を観察し、ロ)雇用の諸慣行と企業別労使関係がどのような背景のもとでどのような労使の意思決定プロセスを経て形成・変容されたかを分析することを通じて、ハ)各社会における労使の「秩序形成」過程の特徴を検討し、かつ固有の課題を析出することを目的とする。 平成17年度においては、A)労働協約の統計分析と、B)ケース・スタディーを同時に進めた。A)においては、韓国の労働協約の体系的な収集を促す一方で、日本の労働協約の細部的なコーディングを実施した。具体的には、収集されているすべての協約をスクリーニングし、約3千件の標本を抽出した後、韓国の共同研究者と打ち合わせをして作成した統一的なコーディング基準案に従い、1件1件を丹念にコーディングした。現在もコーディング作業は進行中である。B)においては、日本のトヨタ自動車、日産自動車、三菱重工業、旧国鉄の労働協約および雇用・賃金・人事・労使関係の諸制度を収集・整理する一方、韓国の現代自動車、大宇造船海洋、韓進重工業の労使を深層面接法によって聞き取り調査した。具体的には、それぞれの企業の労働協約と関連する諸制度を把握すると同時に、労働協約の締結及び変更の過程、経営および労働組合の意図と政策、協約の内容及び交渉の手続きに関する経営側および労働者側の評価、そして現在の問題点を調査した。なお、労使関係の全貌をとらえるためにはホワイトカラー層に対しても相応の分析を加える必要性があると考え、金融産業をパイロット調査することにした。韓国においては国民銀行の労使を聞き取り調査し、労働協約および関連諸制度を収集・整理した。日本においては具体的な比較対象を模索中である。
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