2006 Fiscal Year Annual Research Report
移住者によるエスニック・ビジネス起業過程に関する比較社会学的研究
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17330114
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
魯 富子 名古屋大学, 環境学研究科, 助手 (30303572)
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Keywords | 職業移動 / 韓国系移住者 / 韓国系キリスト教会 |
Research Abstract |
平成18年度は、名古屋、大阪、東京の韓国系移住者を対象とする質問紙調査を実施した。有効回収数は名古屋130票、大阪101票、東京130票となる。現在、その結果の分析を進めているが、名古屋の韓国系移住者の調査結果を示すと以下のとおりとなる。 1)基本的属性に関して、男性は30歳代、女性は50歳代が多い。学歴の4割は高卒である。男性は高卒、女性は義務教育卒が多い。 2)回答者の多くは直接韓国から流入しているが、そのうち3割の回答者は韓国人友人に依存して来日している。 3)回答者の職業構成は(1)専門管理職、(2)サービス業、(3)無職・学生・主婦の3つのカテゴリーに区分できる。 4)回答者の職業移動に関しては、来日前の職業を日本でも引き続いているという「水平移動」が確認できる。 5)回答者は韓国人からなる親密な絆を引き出しながら、中国朝鮮族、日本人、在日コリアンともネットワークを形成している。また、友人と出合った文脈は民族別で異なっている。 6)勤務先で働くのは韓国人が多く、その次は日本人、中国朝鮮族、在日コリアンである。 7)回答者の共生意識は概ね肯定的であるが、在日コリアンの帰化についての回答者の半分は否定的である。 8)韓国系移住者は日本社会での生活や福祉制度に一定の満足を示す一方で、生活上のニーズが少ないことや身分の不安定さからくる孤立感という側面も持ち合わせているといえる。 9)韓国系移住者の不安な点は学校でのいじめ、学校生活の適応、犯罪、日本語問題、アイデンティティの問題など多岐にわたっている。とくに子どもが日本社会でどのように生きていくのかが悩みである。 10)地域で必要な情報としては、公共機関の利用に関する情報と地域での子どもに関わる情報である。 以上の調査結果を通じて、名古屋市の韓国系移住者は、都心部のフィリピン人や郊外の団地に集住するブラジル人とは違って、行政との関わりが少なく、かつ顕在化された生活上の問題もないために「外国人住民」として注目されなくて、韓国系移住者は自分たちのネットワークを形成して、日本社会に適応してきたことがわかった。こうした名古屋市の結果を踏まえて、大阪や東京の韓国系移住者との共通点と相違点などを都市の差異との関わりで今後分析をしていくことが求められる。なお、以上の調査結果は、第79回日本社会学会(2006年10月立命館大学)において、「大都市における韓国系移住者の移住・定着過程-名古屋市の韓国系キリスト教会調査-」というテーマで報告を行った。
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Research Products
(1 results)