Research Abstract |
幼児や子ども,知的障害者が被害者や目撃者として司法面接を受けたり法廷に立つように求められることは少なくない。しかし現実場面においては,面接官とこれらの被面接者との間ではコミュニケーションがうまく運ばないことも多い。問題のひとつとして,面接官がこれらの被面接者の用いる語彙や言語の特徴を十分理解していないことが挙げられる。本研究の目的は、幼児,児童,知的障害者を対象に,面接に関る能力,特に出来事を表す語彙(時間,場所,活動,評価等を表す語)の発達過程を調べることである。本年度は1.文献,先行研究の検討,2.幼児を対象とした実験的調査による検討,および3.事例による検討を行った。 1.文献研究:司法面接で必要とされる言語・認知能力という観点で資料を検索し,文献研究を行った。出来事を語る語彙の獲得,情報源の理解,事実とファンタジーの区別,嘘と真実の区別,誘導の影響等について,発達的経過を検討したところ,幼児が一定の語彙を獲得し,情報源を理解し,事実とファンタジー,嘘と真実を区別できるようになるのは6歳程度であること,この年代になると大人による質問に頼る度合いが減り,よって質問による誘導の影響も少なくなることが確認された。 2.実験的調査研究:4-7歳児,計40名を対象に,実験的調査研究を開始した。語彙検査,気持ちに関する語彙を調べる寸劇(主人公の人形が探し物を見つける,恐い目に遭う等),時間に関する語彙調査,情報源の理解に関する課題等を作成し,幼稚園児(4-6歳)および1年生に個別調査を行った。第1週めは,語彙検査,気持ちに関する語彙調査,時間に関する語彙調査などを行う。第2週目は同じ幼児に1週目の出来事や人物(実験者)について尋ね,身体に関する語彙,活動に関する語彙についても調べた。現在,延べ80人の資料を収集しているが,年齢ごとの人数が十分でないため,来年度も継続して収集する。 3.事例研究:知的障害者の捜査面接の資料を得て,分析を行った。この事例では,被面接者は面接者の質問を理解することができない。そのため,被面接者の独白による報告が行われている(その意味では誘導は生じにくいといえる)。主語が省略される(従って他者が叩いたのか,自分が叩いたのかが確定できない)等の特徴が見られた。
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