Research Abstract |
幼児や児童が目撃供述や被害供述を求められることがある。本研究の目的は,子どもがどのように出来事を語るかを語彙の面から検討するとともに,子どもに適した面接技法を開発することである。本年度は以下のような実験研究,事例研究,調査研究を行った。(1)実験研究:18年度から開始した幼児の資料の収集を終え,人物記述(髪型,顔,目,口,鼻等),出来事の記述(いつ,どこで,誰が,何を,どうした),および感情語彙について分析を進めた。人物については髪型については比較的正確に記述できるものの,顔のパーツについては「大きい,丸い,ふつう」等の無指標(unmarked)の表現,「いっぱいはいっている」等の曖昧な表現が多いこと;感情については「わからない」反応のほか,全般的にポジティブな表現よりもネガティブな表現の方が多様であることが示された(嬉しいv悲しい,嫌だ,困っている等)。出来事については現在分析中である。加えて,小学校2,4,6年生のデータも収集した。(2)事例研究:幼児,児童,知的障害者に対する司法面接の分析を行い,クローズ質問の影響や実演の問題について検討した。(3)調査研究:模擬裁判市民集会に訪れた市民90人を対象に,幼児の証言に対する意識を調査し,先行研究(Kassin, et al., 2001)における専門家の判断と比較した。他の目撃証言の正確さ等に関する質問項目に比べ,市民は専門家よりも,幼児の証言を「正確だ」と判断する傾向が強いという結果が得られた。上記のデータ,また市民のもっている信念を踏まえた面接法の開発が必要である。
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