Research Abstract |
本研究は, 事故や事件に遭遇し, 報告を求められた子どもが, どの程度, どのように出来事を報告できるかを調べることを目的としている。一昨年度は一般の幼児を対象に, 出来事を報告するための語彙の調査を行った。昨年度は人物記述について検討し, 児童への調査も行った。本年度はこれまでの結果の分析を進めるとともに, 特に感情表現に焦点を当て, 児童相談所に保護されている子どもへの調査を行った。また, 現実事例の検討を進めた。 調査研究 : 人形劇をDVDで提示し, 各出来事について報告を求めるとともに, (1)他者の感情の説明(登場人物はどのような気持ちだったか), (2)自己の感情の説明(対象児は登場人物のことをどう思うか)について尋ねた。一般の幼児41人, 小学生1〜6年86人, 保護児17人(幼児6人, 小学生11人, 内訳はネグレクト3人, 身体虐待8人, その他6人)のデータを分析した結果, ポジティブな感情語(嬉しい, よかった等)については一般児と保護児で差はないが, ネガティブな感情語(悲しい, さびしい等)については, 特に高学年の児童において, 保護児の使用語彙数が一般児に比べ少ないことが示された。ネガティブな状況にあることが疑われる子どもにおいて, 報告できる感情語彙が少ないということは, 面接を行うに上で特に留意しなければならない。 事例研究 : 事件に遭遇したとされる幼児, 生徒, 障害をもつ児童に対する面接を行い, 事例分析を行った。事件の内容に即した特別な配慮の必要性や, 報告の質・量が年齢のみならず, 報告への動機付けにも依存することが示唆された。
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