Research Abstract |
本研究は,現在進行中の教育の自由化や学校のスリム化といった改革が,教育課程の変化とともに,学校組織や学校文化,さらには地域杜会にどのようなインパクトを与えるかという問題を,中等教育の部活動における変化を通して解明し,個々の学校や地域社会におけるそのインパクトの対処法を臨床教育学的に提案することを目的として取り組んでいるものである。 平成19年度は,次の二つの研究に取り組んだ。 第一に,現行学習指導要領のもとで,学校から地域社会への委譲を進めようとしていた部活動が,次期学習指導要領では,再び学校教育活動の一環として,教育課程との関連づけられる方向に向くことが明らかになったのを受けて,中学校運動部活動の顧問教師を対象に質問紙調査を行った。調査によって,顧問教師の部活動指導への関与状況の多様な状況など,これまでほとんど明らかにされてこなかった顧問教師の勤務実態を明らかにすることができたほか,部活動指導の問題点や解決すべき課題について意見を収集することができた。その結果,部活動指導が,これまで個々の教員の任意と善意によって運営されてきたこと,顧問教師は,部活動指導を通してより多面的に生徒を捉えようとしていること,しかし,任意と善意に頼っていては運営が成り立たなくなりつつあることが明らかになった。そこで,教育課程と関連づけるにあたっては,時間の面,管理,運営や技術指導の面,運営費用の面などで,顧問教師をサポートする制度等の整備が急務であることなどを提案した。 第二に,前年度までから引き続き,中学校の観察調査を行った。とくに,顧問の異動後,引き継いだ顧問がどのように部の運営を継続していき,その際にどのような困難があったかを検証した。その結果,部の存廃には,管理,運営と技術指導それぞれの問題をどう解決するかが重要であることが明らかになった。
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