Research Abstract |
Toulouse Projectの進展と共に我々の取扱っている形式級数の解析的意味付けについても考えるべき時期であると判断してその手始めに2つの単純変わり点を持つSchrodinger方程式を"∞-Weber方程式",即ち無限級数をパラメタとして含むWeber方程式,に変換する際に現われる"形式変換"のボレル平面上での意味を改めて考えて見た所全く予想外の事実が発見された。この"形式変換"に対応して現われる超局所微分作用素〓は次のような美しい構造を持つ:〓ψ+,B=∫^y_yoK(χ, t, y-y'd/dx)ψ+,B(χ, t, y^1)dy^1ここでKはd/dxに関して無限階微分作用素である。(T. Aoki, T. Kawai and Y. Takei, RIMS preprint 1616 (2007)) これは"完的WKB解析"がBorel平面(プランク定数の逆数の双対変数であるy-変数)については複素超局所的であり,Schrodinger方程式の元来の独立変数χに関しては局所的であることを意味している。これに拠り,∞-Weber方程式の構造,ひいてはWKB解の"動かない特異点"に関する我々の理解は格段に深まったと感じる。今回のこの結果は無限微分作用素が(純粋数学に限らず)応用数学においも強力な道具であることを示したと云う意味でも重要である。 又,平成20年1月には(1月28日〜2月1日)マルセイユ(フランス)のCIRM(数学研究集会国際センター)において"Toulouse Project"の進展状況の報告とした泊り込みの研究会を日仏の研究者を中心とし,独,蘭,米,加,ポーランド,ブラジル等からの参加者も交えて開催した。(組織委員は竹井義次とL. Stolovitz (Toulouse大学-CNRS))この会では,河合隆裕がToulouse Projectの現況について報告,青木貴史がToulouse Projectの基礎となる0-パラメタ解の構成に関する代数幾何学的補題(本多尚文との共同研究)の発表,小池達也が単純極型作用素の物理学への応用を論じ,又,本多尚文(北海道大・理)が我々(青木・河合・小池・竹井)との討論に基づく仮想的変わり点の具体的な(計算機を用いた)決定法について報告し,いずれもセミナー参加者の強い興味を惹いた。
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