2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17340087
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
應田 治彦 独立行政法人理化学研究所, 岩崎先端中間子研究室, 先任研究員 (60221818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 雅彦 独立行政法人理化学研究所, 岩崎先端中間子研究室, 主任研究員 (60183745)
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Keywords | K中間子原子 / X線 / シリコンドリフト検出器 / エキゾチックアトム / ストレンジトライバリオン |
Research Abstract |
新しく開発されたシリコンドリフト検出器(SDD)を用いて、K中間子ヘリウム原子の3d→2p遷移に伴うX線のエネルギーを、非常に高い統計精度で測定する実験をKEKで行った。同実験は過去に3回行われ、いずれも非常に大きな(〜40eV)斥力的な2p準位のシフトを報告しているが、ビーム中での測定器のエネルギー較正を行っていないなど結果は確定的でない。もし、数eVを超える大きなシフトが実験的に確定すれば、我々のグループが先に発見した"ストレンジトライバリオン"が、確かにK中間子-原子核の束縛状態であることが確定する。 過去の実験で用いられためは通常のSi(Li)検出器である。数mmの厚みを有するため、高エネルギーγ線のSoft Compton散乱に伴うバックグラウンドが避けられず、また収量確保のための大型化に伴って分解能が低下していた。我々のSDDは、静電容量が遥かに小さく、100平方mmと大型化しても180eVと2倍以上高い分解能が確保できる。また、0.26mmと薄型のため、X線ピーク領域でのシグナル/バックグランド比を約1桁改善できた。さらに、K中間子の入射経路上に置かれたチタン/ニッケルの薄膜からの特性X線を同時に取りこむことにより、SDD検出器の絶対エネルギー較正を常時行った。 実験は、平成17年12月までに6週間に渡ってビームタイムを消化、データ収集は極めて成功裡に行われた。現在オフライン解析を行っている。初期的な解析結果では、最終的なK中間子ヘリウム原子の2p準位のエネルギーについて統計精度〜2eVと、過去の実験を1桁近く上回る高統計のデータを得ていること;既に、過去の〜40eVという極端に大きなシフトの報告値は間違いであったことが判っている。今後、オフラインの解析計算機環境を構築してゆくことによって、18年度中に最終的な結果を得るべく解析に集中する。
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