2006 Fiscal Year Annual Research Report
有機半導体デバイスにおける電界注入キァリアーの電子スピン共鳴による研究
Project/Area Number |
17340094
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
黒田 新一 名古屋大学, 大学院工学研究科, 教授 (20291403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 裕 名古屋大学, 大学院工学研究科, 助教授 (10260374)
丸本 一弘 筑波大学, 大学院・数理物質科学科, 助教授 (50293668)
田中 久暁 名古屋大学, 大学院工学研究科, 助手 (50362273)
下位 幸弘 産業技術総合研究所, ナノテクノロジー研究部門ナノ構造物性理論グループ, 主任研究員 (70357226)
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Keywords | 有機半導体 / 電界注入 / 電子スピン共鳴 / ペンタセン / 分子配向 / ポーラロン / ポリアルキルチオフェン |
Research Abstract |
本年度は、東北大の岩佐グループとの共同により、高い電荷移動度を示すことから注目されている低分子材料であるペンタセンの電界効果トランジスタ(FET)を作製し、半導体層に注入された正キャリアーの電子状態、及び伝導機構を電子スピン共鳴(ESR)法により調べた。 ESR試料管に入るサイズのガラス基板上に、比誘電率の高いアルミナ絶縁膜、ペンタセンの蒸着膜、及びトップ電極を形成し、金属-絶縁体-半導体(MIS)構造を持つFETデバイスを作製した。この構造は、キャパシタンス(C-V)測定が可能な構造であるため、ESR測定、C-V測定、FET特性測定を同一試料で行うことができる。 まず、電場誘起ESR信号のg値、線幅の異方性を測定し、正キャリアーの蓄積が起こる絶縁膜界面近傍の局所的な分子配向を調べた。ESR線幅は、ペンタセン中の水素原子核と注入キャリアー(π電子)間の超微細相互作用を反映するため、固体中ではESR信号のg値と共に、π軌道の向きに応じた異方性を示す。観測されたg値と線幅の異方性から、ペンタセン分子の長軸が絶縁膜に対して垂直に立っ(π軌道が膜面内に平行になる)分子配向を持つことが明らかになった。この結果は、X線構造解析の結果と一致したが、界面近傍の分子層の配向を明らかにしたのは、はじめてである。 また、ESR線幅の解析から、注入キャリアーの空間広がり(スピン密度分布)が10分子程度であることを示し、ペンタセンにおける伝導機構が従来示唆されてきたホッピング型ではなく、バンド型であることをミクロに解明することに成功した。 前年度のESR研究から、導電性高分子である立体規則性ポリアルキルチオフェンのMISデバイスでは、高濃度のキャリアー注入を行うと電荷量の増加に対しスピン量の増加が抑制され、スピンを持っポーラロンからスピンを持たないバイポーラロンへの転移を示す結果が得られている。一方、ペンタセンではスピン注入量は電荷注入量と一致した。従って、分子構造の違いを反映した注入キャリアー特性が示された。
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Research Products
(6 results)