2005 Fiscal Year Annual Research Report
磁性ナノ構造薄膜における平衡・非平衡電子スピン分極の局所的探査と解明
Project/Area Number |
17340108
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
壬生 攻 名古屋工業大学, 工学研究科, 教授 (40222327)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸 誠 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (40243109)
|
Keywords | 放射光 / 核共鳴散乱 / メスバウアー分光 / 電子スピン分極 / 局所磁性 / 薄膜 / 界面効果 / スピントロニクス |
Research Abstract |
メスバウアー分光法(γ線吸収スペクトル分光法)など原子核をプローブ(探針)とした物性測定法は,物質の局所磁性の測定手段として極めて有効である.メスバウアー分光法を単結晶基板上に作製したナノ薄膜やナノ構造体に適用するのに際しては,いわゆる反射配置での測定が不可欠であるが,通常用られる内部転換電子検出法は実験環境に対する制約が多く,低温における測定,磁場・電場中での測定,低プローブ濃度試料の測定などが困難になってくる.これらの欠点を補う測定手段として,放射光核共鳴散乱法(放射光メスバウアー分光法)の有効利用を3年間の本課題研究期間中に進めていく計画である. 今年度は,金属ナノ薄膜における局所電子スピン分極や局所磁性の測定を目標にして^<119>Snおよび^<57>Fe核共鳴散乱実験を行った.電子スピン分極のプローブとなる^<119>Snあるいは^<57>Fe核を含む薄膜試料に,プローブ核のメスバウアー遷移エネルギーにあわせた単色放射光X線を入射し,核によって共鳴散乱されたX線の時間スペクトルを測定した.実験条件の最適化の結果,90%up^<119>Snに対しては6原子層程度,90%up^<57>Feに対しては1原子層程度の厚さがあれば,半日から1日の測定でS/N比の良いスペクトルが得られることが確認された. 物性面では,強磁性層/反強磁性層における界面効果が反強磁性Cr層の磁気的秩序に及ぼす影響に関するデータが得られた.厚さ10.0nmのCr層上に0.2nmの^<57>Fe単原子プローブ層を配した試料においては,Cr層の下地に1.0nmの^<56>Fe強磁性層がある場合とない場合で80Kの核共鳴散乱時間スペクトルに明らかな違いがみられ,^<56>Fe/Cr界面効果の影響を受けてCr層の磁性が変化し,^<57>Fe核プローブが感じる内部磁場の違いとして現れていることを示す結果が得られた.
|
Research Products
(1 results)