2006 Fiscal Year Annual Research Report
磁性ナノ構造薄膜における平衡・非平衡電子スピン分極の局所的探査と解明
Project/Area Number |
17340108
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
壬生 攻 名古屋工業大学, 工学研究科, 教授 (40222327)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸 誠 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (40243109)
|
Keywords | 放射光 / 核共鳴散乱 / メスバウアー分光 / 電子スピン分極 / 局所磁性 / 薄膜 / 界面効果 / スピントロニクス |
Research Abstract |
昨年度に引き続き,単結晶基板上に作製されたナノ薄膜やナノ構造体における局所的な磁性や電子スピン分極の探査と解明を目指して,放射光核共鳴散乱法(放射光メスバウアー分光法)の実験条件最適化と実験データの収集を推進した.とりわけ本年度は,ナノスケールの厚さをもつCr層とその上に蒸着された^<57>Fe単原子プローブ層の磁性を探る実験を集中的に行った.厚さ4〜17nmのCr層上に^<57>Fe単原子層(0.2nm)を蒸着した試料をいくつか作製し,核共鳴散乱時間スペクトルの温度依存性を系統的に測定した.その結果,Cr層の下地に10nmの強磁性^<57>Fe層がある試料とない試料で,またCr層の厚さに依存して,スペクトルに明確な違いが観測された.現時点で得られている情報は,以下のとおりである. (1)室温では,すべての試料において^<57>Fe単原子層は常磁性的である. (2)室温においては,いわゆるダイナミカル効果の影響により,核の励起寿命が自然寿命の5倍程度までスピードアップしている. (3)低温においては,核脱励起のスピードアップがさらに顕著になる.(ダイナミカル効果の温度変化に依るものか,広く分布した内部磁場の発現を反映したものかは不明.) (4)低温におけるCr層およびその上に蒸着された^<57>Fe単原子層の磁性は,試料に依存して,すなわちCr層の環境に依存して異なる.また,何れの試料の^<57>Fe層も,典型的な強磁性Feとは異なり,内部磁場の分布あるいは時間的揺らぎを示している. (5)下地^<57>Fe層ありCr(10nm)層上の^<57>Fe単原子層は,低温において比較的内部磁場の分布が少ない,しっかりとした磁気秩序をもっている. (6)何れの試料においても,83〜25Kの間での劇的な磁性の変化は観測されない. 今後,さらに実験条件の最適化を進め,必要となるプローブ層の厚さや測定時間の低減を進めると共に,より系統的にデータを蓄積していくことが課題となっている.
|
Research Products
(2 results)