2005 Fiscal Year Annual Research Report
50テスラ強磁場X線内殻分光による伝導電子-局在電子相関系の研究
Project/Area Number |
17340111
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松田 康弘 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (10292757)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲見 俊哉 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 副主任研究員 (30354989)
大和田 謙二 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (60343935)
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Keywords | 強磁場 / X線吸収 / 価数揺動 / 価数転移 / 近藤半導体 |
Research Abstract |
エネルギー、体積ともに従来型パルス磁場装置の約1/100の小型パルスマグネットにより、50テスラ級の超強磁場発生技術を確立した。また、SPring-8の放射光X線と組み合わせて、強磁場中でのX線吸収スペクトル測定技術を開発した。さらに、液体ヘリウムを用いるタイプの冷凍機を用いて、最低3ケルビンの極低温下での実験も可能にし、本研究で対象とする、遍歴-局在電子相関系の研究を行うための実験条件を実現することができた。本年度は実験技術の開発と平行させて、以下に示す2つのテーマについて実験を行い、それぞれ成果を得た。 1.価数揺動物質の磁場誘起価数転移 価数揺動物質では、f電子と電子との強い混成(c-f混成)によって低温で希土類イオンの4f軌道が遍歴性を持つためイオンの価数が揺らぐ状態が実現し、Yb、EuやCe系では同時に磁気モーメントが消失する。強磁場下では、f電子は局在化し、その際、価数転移が生じる。本年度は、代表的な価数揺動物質であるYbInCu_4とEuNi_2(Si_<1-x>Ge_x)_2(x=0.82,0.85)について44テスラまでの強磁場X線吸収実験をL_3吸収端近傍で行った。その結果、20〜40テスラの領域で価数の急激な変化を観測でき、価数の磁場依存性を初めて明らかにした。 2.近藤半導体の超強磁場中での電子状態 近藤半導体と呼ばれる物質では、強いc-f混成により低温でエネルギーギャップが形成される。強磁場中ではゼーマンエネルギーによりギャップが消失すると予想されているが、強磁場ギャップレス相での電子状態は不明である。本年度、YbB_<12>とCe_3Bi_4Pt_3の2つの近藤半導体について、低温強磁場中でX線吸収スペクトルを観測した。Yb、CeのL_3吸収端近傍でのスペクトルを最高51テスラまで調べた結果、ギャップ消失が予想される、30〜50テスラの磁場中においてもスペクトルに大きな変化は現れなかった。このことは、c-f混成、イオンの価数がギャップ消失の前後であまり大きく変化しないことを示しており、近藤半導体の物性を理解する上で重要な結果である。
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Research Products
(1 results)