2007 Fiscal Year Annual Research Report
50テスラ強磁場X線内殻分光による伝導電子-局在電子相関系の研究
Project/Area Number |
17340111
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松田 康弘 Tohoku University, 金属材料研究所, 准教授 (10292757)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲見 俊哉 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 副主任研究員 (30354989)
大和田 謙二 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (60343935)
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Keywords | X線磁気円二色性 / パルス強磁場 / 価数揺動 / 磁場誘起相転移 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
Euイオンを含む金属間化合物EuNi_2(Si_<1-x>Ge_x)_2について、パルス強磁場下でのX線磁気円二色性(XMCD)スペクトルの測定を40テスラの強磁場下で実現させた。実験は、SPring-8のBL39XUにおいて実施し、測定は5Kの低温下で行った。パルス磁場中でのXMCD測定は世界でもまだ僅かしか報告が無く、40テスラの磁場領域でのXMCD実験を成功させたのは、我々の知る限り本研究が最初であり、現在の世界最高磁場である。 EuNi_2(Si_<1-x>Ge_x)_2のEuイオンは低温で顕著な価数揺動現象を示すことがこれまでに分かっているが、低温で非磁性状態であるため、XMCDの観測には強い磁場を印加する必要がある。今年度、40テスラ強磁場を用いることで、価数揺動状態におけるEuの2価と3価の状態を選別してXMCD信号を観測することに初めて成功した。Eu2価の状態は、全角運動量J=7/2を持つため、大きな磁気モーメントが期待され、実際に、大きなXMCD信号が観測されたが、注目すべき事に、Eu3価の状態にも明瞭なXMCD信号が観測された。Eu3価はJ=0の基底状態を持つため、孤立イオン状態でのXMCDの期待値はゼロである。今回得られたEu3価のXMCD信号は、この系で強い伝導電子-f電子(c-f)混成が生じていることを示唆しており、希土類金属間化合物における価数揺動現象を解明する上で極めて重要な知見であると考えられる。40テスラ強磁場XMCDは、重い電子系をはじめとする様々な強相関物質の電子状態解明に威力を発揮すると期待され、これまで強磁性体の研究手法として考えられていたXMCDを、広く、反強磁性体や常磁性体に適用可能にしたことの意義は大変大きい。
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Research Products
(6 results)