2006 Fiscal Year Annual Research Report
彗星表面における衝突クレーター形成過程と彗星の熱史
Project/Area Number |
17340127
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
荒川 政彦 名古屋大学, 大学院環境学研究科, 助教授 (10222738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 哲生 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (10126196)
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Keywords | 衝突クレーター / 彗星 / 熱進化 / 焼結 / スケール則 / 衝突破片 / 衝突融解 / 重力 |
Research Abstract |
本年度は雪試料の高速度クレーター形成実験を行った。実験は、北大・低温研の大型低温室(室温-10℃)に設置された二段式軽ガス銃を用いて行った。弾丸にはナイロン(質量8mg)を用い、速度2.3〜3.3kmlsで雪試料に衝突させた。ターゲットの雪試料は、空隙率80%と50%の2種類を準備し、その形状は円筒形で、直径、高さともに約10cmであった。衝突の様子はイメージコンバーターカメラで観測し、実験後の試料は回収しクレーターの観察を行った。 衝突により放出されるイジェクタの最大速度を調べたところ、空隙率80%の場合も50%の場合も、衝突速度の約20%であることがわかった。このように50%を超える高空隙の場合、空隙率に関係なくイジェクタの最大速度が決まっているように見える。また、今回の実験では最大300J/kg程度のエネルギー密度を80%空隙率の試料に与えているが、その結果、試料が破壊されることはなかった。雪の衝突破壊強度は空隙率の増加とともに大きくなることが、空隙率55%までは実験的に確認されているが、この傾向が80%まで広がることが確認された。 回収された試料からクレーターの形態を解析したところ、80%空隙率試料では、上部を削られた球の形状を示すクレーターが観測された。一方、50%空隙率試料のクレーターは、スポール破壊によると思われるリング状の外縁部を持ち、その中に球形を示すクレーターが観察された。球の中心は弾丸径の5倍くらい試料中に潜り込んでいる。この空隙率の試料にのみ、クレーターの底面および側面に氷が融解して再凍結してできたと思われる薄い層が確認された。再凍結層の外部には氷粒子が破砕し、圧密された層が確認された。このことから、衝突速度2.7km/s(衝突点圧力〜3.9GPa)以上では、空隙率50%の試料においてはクレーター形成時に十分な量の氷が衝突溶融を起こすことがわかった。
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Research Products
(6 results)