Research Abstract |
黒潮・黒潮続流に伴う海面水温フロントに対する大気境界層の変質を調べるために,同海域に於けるラジオゾンデ観測を本研究の中心課題として行っている.昨年度に引き続き,海洋調査船からの観測を今年度は6月1日から7月5日にかけて,スクリップス海洋研究所のR/V Mellvilleから行った.また,シーローメータを同船に設置し,雲底高度を連続的に計測した.観測期間中,大気下層の梅雨前線は北緯30-40度の間を数日のスケールで南北移動しているに対し,黒潮・黒潮続流に於ける水温フロントは観測期間中ほぼ一定の南北温度傾度を同じ緯度帯に維持していた. 水温フロントより梅雨前線が北側にある場合は,黒潮続流付近でのラジオゾンデ観測は大気下層の相当温位が高くより湿潤で高温であることを示した.このため,海面付近の静的安定度は安定しており,深い混合層は大気下層に形成されない.そのため,相対湿度は海面付近でもっとも高く,海霧が出現しやすい状況にある.一方,梅雨前線が水温フロントより南下した場合には,フロント付近の水温場は大気に対して大きく応答せず,水温構造をそのまま維持する.これに対し,水温フロント上の大気下層は低温・乾燥した低い相当温位をもっている.このため,海面付近の静的安定度は相対的に不安定となり,1000-1500m程度の混合層が形成される.この混合層の上端では相対湿度が100%に近く下層雲のデッキが形成されている.これらの海霧・下層雲の様子はシーローメータデータの解析からも支持される.このように,霧を含む下層雲の状態は水温フロントと梅雨前線の相対的な位置で決まるが,霧あるいは下層雲の状態にあっても,それらが水温前線の暖水側・冷水側で変質を受けている可能性がある.今後は水温フロントによる雲の変質について解析を進める.
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