2006 Fiscal Year Annual Research Report
水銀汚染指標としての底生有孔虫群集変化に関する研究
Project/Area Number |
17340155
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
大木 公彦 鹿児島大学, 総合研究博物館, 教授 (90041235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨安 卓滋 鹿児島大学, 理学部, 教授 (60217552)
日高 正康 鹿児島大学, 水産学部, 講師 (20208771)
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Keywords | 底生有孔虫 / 水銀汚染 / 海底堆積物 / 水俣湾 / 南部八代海 / 底層水 / 粒度組成 / ベントス |
Research Abstract |
これまでに科研費による水俣湾の採泥調査は,平成12年11月、平成13年3月、さらに緯度経度25秒のグリッドを設定し、湾内の15地点と湾外の2地点において平成17年4月20日、平成18年度6月26日に採泥調査を行った。とくに平成17年4月の調査は、水俣湾の海水中の水銀と海底表層堆積物との関係、溶け出す水銀の優勢な化学形、水銀移動の実態の解明、水銀汚染と底生有孔虫との相関の解明を目的とし、水銀濃度に関する研究結果を報告した(Tomiyasu et al.,2006)。柱状試料(コア)による総水銀・メチル水銀の垂直変化から、表層では総水銀量が1mg/kgを超えて高いこと;水俣湾では浚渫による混合や再堆積によって、コアの上部における水銀濃度はあまり変化しないこと;浚渫した水俣湾のメチル水銀は、浚渫が行われなかった南部の袋湾に比べて低い値を示し、浚渫による混濁によってメチル水銀が海水中に溶出したと考えられること;さらに、水中生物によって吸収され、蓄積された、袋湾の堆積物に含まれるメチル水銀の高い濃縮が明らかになった。一方で、水俣湾・袋湾の10地点で採取したコアの表層1cmに含まれる底生有孔虫群集を調べ、袋湾の最奥部(地点11)を除く9地点で石灰質ガラス殻を持つ有孔虫がほとんどを占め、袋湾奥部に位置する地点11では、他の地点に比べ膠着質殻有孔虫の産出頻度が高かったことがわかった。また、5地点は下位の層準についても底生有孔虫を調べ、袋湾奥部の地点11を除く4地点では、堆積物10cc中の底生有孔虫個体数は、水銀汚染前と考えられる層準に比べ、高い水銀の値を示す層準で減少傾向にあり、とくに高濃度の水銀を含む層準ではその数が激減し、南部八代海で汚染後に産出頻度が増加したBulimina denudataが、この4地点でも、唯一、汚染後の層準で増加し、高い産出頻度を示すことがわかった。浚渫しなかった袋奥部に位置する地点11はB.denudataが優勢種として産出しなかった。この地点の表層の優勢種は、汚染前と考えられる下位の層準でも変わらなかった。Trochamminaの2種が優勢で、底質が腐泥で石灰質ガラス殻有孔虫の殻が白化あるいは一部溶解していることから、この地点の特異な有孔虫群集は水銀量よりも還元的な環境を強く反影していると考えられる。この結果は北海道大学(MRC研究発表会)で発表した(大木ほか、2007)。
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Research Products
(3 results)