2007 Fiscal Year Annual Research Report
水銀汚染指標としての底生有孔虫群集変化に関する研究
Project/Area Number |
17340155
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
大木 公彦 Kagoshima University, 総合研究博物館, 教授 (90041235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨安 卓滋 鹿児島大学, 理学部, 教授 (60217552)
日高 正康 鹿児島大学, 水産学部, 講師 (20208771)
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Keywords | 底生有孔虫 / 水銀汚染 / 海底堆積物 / 水俣湾 / 南部八代海 / 底層水 / 粒度組成 / ベントス |
Research Abstract |
水俣湾と袋湾の9地点から採取した海底表層堆積物(コア)について総水銀濃度の分析を行い、すべての地点で底質中の総水銀濃度は上位へ高くなることがわかった。平行して水銀汚染前と汚染後の堆積環境の変化の有無を調べるため、この海域の13地点から採取したコアの、それぞれの全層準271試料について粒度分析を行った。その結果、集中豪雨等のイベント(2試料)を除いて全ての堆積物が粗粒シルト〜中粒シルトから成り、淘汰度も悪い〜非常に悪い(1.23〜2.55)で、この海域の底層流は汚染前、汚染後を通じて変化がなく、泥質堆積物の堆積する流れの弱い環境下にあったことが明らかになった。水俣湾および沖合の6地点のコアの下部の層準では、この海域の自然値である総水銀濃度を示し、汚染前(1932年以前)の堆積物であると考えられる。この内3地点では1977年以降に海底の水銀汚染堆積物が浚渫されたが、浚渫後の表層近くの層準で総水銀濃度が高いことがわかった。また、この海域における底質からの水銀の溶出状況を明らかにするために、底質直上水、底質表層中の総水銀濃度及びメチル水銀濃度を測定した。底質中の総水銀濃度は、平均3.5mg/kgで、それに対するメチル水銀の割合は0.27%、また、底質直上水では、総水銀濃度1.8ng/Lに対して、メチル水銀の占める割合は50.7%であった。直上水中の総水銀濃度は、報告されている表層水に比べて明らかに高く、底質からの溶出が水中の水銀の起源であること、溶出の際にはメチル水銀が主要な化学形である事が示唆された。コア中の底生有孔虫群集については現在も解析を続けているが、総水銀濃度の高い層準ほど底生有孔虫総個体数が小さいこと、南部八代海と同様に、Bulimina denudataのみが総水銀濃度が高い層準で産出頻度が高くなり、水銀汚染の指標となりうる可能性がさらに高くなった。平成20年度にこれらの成果を報告する予定である。
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