Research Abstract |
今年度は、昨年度採集したイタリアイヴレア帯中の角閃岩と花崗閃緑岩をそれぞれ原岩とするマイロナイト試料(1)(2),および新潟大学宮下教授提供のオマーンオフィオライト中の角閃岩を原岩とするマイロナイト試料(3),の解析を行った。試料(1)(3)中のホルンブレンドと斜長石,および試料(1)中のカリ長石と斜長石の化学組成にそれぞれ地質温度計を適用したところ,変形時の温度は520-650℃と推定された。これらの試料中の斜長石粒子集合体は,比較的粗粒(粒径100-1500μm)なポーフィロクラストと細粒粒子(粒径〓200μm)から成り,いずれの斜長石にも波動消光,変形双晶,亜粒界などの結晶塑性変形の痕跡を示す微細構造が認められる。ポーフィロクラストの斜長石の化学組成((1)An_<51~60>,(2)An_<36~38>,(3)An_<89~93>)は試料により異なるが,ポーフィロクラストと細粒粒子の間に化学組成の違いが認められないことから,細粒粒子は動的再結晶により形成されたと考えられる。ポーフィロクラストに隣接する再結晶粒子の大部分は,ポーフィロクラストと結晶方位が大きく異なることから,斜長石の動的再結晶機構は亜粒回転ではなく,粒界移動と考えられる。また,いずれのマイロナイト試料においても再結晶粒子には,{121}と<111>がそれぞれ面構造と線構造にほぼ平行に配列する結晶方位配列が発達していた。 以上の結果は,昨年度解析を行った,日高変成帯ポロシリオフィオライトおよびパキスタンコヒスタン弧の,それぞれの角閃岩を原岩とするマイロナイト試料中の斜長石とも共通しており,角閃岩相で結晶塑性変形した斜長石に普遍的な動的再結晶と結晶方位配列であると結論される。
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