2005 Fiscal Year Annual Research Report
ハイドレート・過冷却水・ガラス中の溶存状態とダイナミクスに関する光化学的研究
Project/Area Number |
17350010
|
Research Institution | Toyota Physical & Chemical Research Institute |
Principal Investigator |
岡田 正 (財)豊田理化学研究所, フェロー (40029442)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広瀬 美治 豊田中央研究所, 分析・計測部, 部長 (60394392)
稲垣 伸二 豊田中央研究所, フロンティア研究部門, グループリーダー (30374086)
|
Keywords | ベンゼンハイドレート / 有機-無機ハイブリッド多孔体 / 発光特性 |
Research Abstract |
ベンゼンハイドレートにおけるベンゼンと水分子との分子間相互作用を手がかりとして、低温水溶液およびメソ多孔体中のベンゼン水溶液の溶存状態とそのダイナミクスを光化学的手法により明らかにすることを目的として研究を進めている。 1.キセノンをヘルプガスとするベンゼンハイドレート(4相共存線は4℃で1.9、5℃で2.1気圧程度)を作成し、450-3300cm^<-1>の領域でラマン散乱の測定を行った。3000cm^<-1>付近のC-H伸縮振動領域では高波数側3088cm^<-1>に新しいバンドが、1600cm^<-1>付近および1000cm^<-1>のC-C伸縮振動領域ではそれぞれ8-11cm^<-1>の高波数側シフトが観測された。 2.細孔径が約3nmの4種類(細孔壁面:SiO_2;SiO_2を(EtO)_3Si-(CH_2)_3-NH_2で表面処理;(SiO_<1.5>-CH_2CH_2-SiO_<1.5>)_n;(SiO_<1.5>-C_6H_4SiO_<1.5>)_n)のメソ多孔体中の水およびベンゼン飽和水溶液(室温で2.3x10^<-2>M)の示差熱解析を行い凝固と融解温度を求めた。凝固温度は約-45℃、融解温度は約-40℃。 3.4種類のメソ多孔体中に水およびベンゼン飽和水溶液を吸着させた系の蛍光スペクトルとその温度効果、蛍光減衰曲線を測定した。蛍光スペクトルの測定において、発光しない石英が手に入らないこと、石英の発光欠陥の励起スペクトルとメソ多孔体の壁面およびベンゼンの吸収がよく似た波長領域に重なっていることから多くの困難が生じた。(SiO_<1.5>-C_6H_4SiO_<1.5>)_nを壁面とする多孔体の蛍光減衰曲線は非指数関数となり、励起状態のダイナミクスが複雑であることを示した。 4.主たる実験装置に関しては、以下の装置を組み立て測定に使えるようにした。 (1)ハイドレート作成用耐圧ガラス容器と温度制御系:市販の低温恒温水槽を0.1℃で制御し、排気系とXe充填系をつないだガラス容器に試料をつめた。攪拌は外部から磁石を用いて行った。 (2)ピコ秒時間相関光子計数システム:波長可変の励起光源として光パラメトリック増幅器出力およびその高調波を使用し、f=10cmのホログラフィック回折格子分光器で分光した蛍光をMCP付光電子増倍管で受光し、時間相関光子計数モジュールにつないだ。時間分解能は10ps程度である。 (3)温度可変セルホルダー:液体二酸化炭素を口径0.1mmの孔からセルに吹き付けることにより定常的な冷却が可能になった。温度制御は4本のヒーターで行った。室温から-80℃の領域で制御できる。
|