2005 Fiscal Year Annual Research Report
高配位典型元素の特性を活用した新規な大環状分子構築法の開発
Project/Area Number |
17350015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
後藤 敬 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (70262144)
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Keywords | 大環状分子 / 高配位典型元素 / ケイ素化合物 / X線結晶構造解析 / 分子スクエア / 分子プリズム / 動的共有結合 / 超原子価結合 |
Research Abstract |
近年、水素結合や金属への配位結合などの超分子相互作用を利用した自己集合により大環状構造を構築する研究が大きな広がりを見せている。これらの自己集合錯体は、熱力学支配により効率よく合成できるが、共有結合性分子に比べて速度論的に不安定であるために、分離精製や化学変換が困難である場合が多い。そこで本研究では、高配位典型元素化合物の超原子価結合を動的変換が可能な共有結合として活用することにより、両者の長所を併せ持つ大環状分子を構築することを目的とした。まず、高配位ケイ素ユニットとして、窒素の分子内配位により活性化されたヒドロシランを合成し、種々のジオールと反応させることによるスクエア型分子の合成について検討した。高配位ヒドロシランユニットを両端にもつビフェニル誘導体と1,4-ブタンジオールとの反応では、クロロホルム中で両基質の混合物を、他の試剤や触媒を加えることなく単に加熱するだけで、高収率で分子スクエアが得られた。生成物の構造は、X線結晶構造解析により決定した。この反応を、^1H NMRおよびゲルろ過液体クロマトグラフィーで追跡したところ、反応の初期には両ユニットが鎖状に連なった多量体が生成し、これをさらに加熱することにより徐々に分子スクエアに変換されていることが明らかになった。これは、速度論的生成物である鎖状多量体の高配位ケイ素上での結合の組み替えが可逆的に起こり、閉環分解によって最終的には熱力学的に最安定な分子スクエアに収束したものと考えられる。同様に、1,4-ブタンジオールの代わりに4,4'-ビフェノールを用いた場合にも、対応する分子スクエアが得られた。また、ジオールのかわりにトリオールを用いれば、三次元大環状分子が生成すると考えられる。トリオールとしてフロログルシノールを用いることで、対応する分子プリズムの合成に成功した。
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Research Products
(6 results)