2006 Fiscal Year Annual Research Report
高配位典型元素の特性を活用した新規な大環状分子構築法の開発
Project/Area Number |
17350015
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
後藤 敬 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 助教授 (70262144)
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Keywords | 高配位典型元素 / ケイ素化合物 / 大環状分子 / ナノスケール分子 / かご型分子 / 超原子価結合 / X線結晶構造解析 / 熱力学支配 |
Research Abstract |
5配位ケイ素化合物の超原子価結合は活性化された共有結合であり、加熱条件下では触媒なしでも可逆的な結合の組み替えが可能な場合がある。また、5配位ケイ素は一般に三方両錐構造を有し、アピカル結合とエクアトリアル結合との結合角は約90度に規定されており、結合の方向性が明確である。本研究では、これらの性質が自己集合錯体の構築に多く用いられている遷移金属への配位結合に類似している点に着目し、5配位ケイ素を接合部として活用した種々の三次元大環状化合物の合成について検討した。特に、分子レベルの容器として近年大きな関心を集めているかご型大環状分子に重点を置き、有機分子を内包可能な空孔をもつ三次元かご型分子の合成を行った。まず、高配位ケイ素ユニットとして、5配位ヒドロシランユニットを三角形の頂点部にもつパネル型分子を合成し、種々のジオールと反応させた。4,4'-ビフェノールとの反応では、クロロホルム中で両基質を単に加熱するだけで、高収率でナノスケールのかご型分子が得られた。生成物の構造は、X線結晶構造解析により決定した。この反応は、両基質以外の試剤や触媒を添加する必要がなく、副生するのは水素のみという物質収支の良い反応である。また、通常の共有結合性大環状化合物の合成とは異なり、希釈条件を用いる必要もない。この反応を、^1H NMRおよびゲルろ過液体クロマトグラフィーで追跡したところ、反応初期には様々な成分の混合物が生成するが、加熱を継続することにより5配位ケイ素上での可逆的な結合の組み替えが起こり、熱力学的に最安定なかご型分子に収束する様子が観測された。これらの結果から、高配位典型元素の特性を活用することで、加熱条件下で熱力学支配により効率的に合成でき、かつ通常の条件では種々の化学反応に耐えうる安定性をもつ三次元大環状化合物を合成可能であることを実証した。
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Research Products
(5 results)