2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17350017
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大須賀 篤弘 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80127886)
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Keywords | ポルフィリン / 環拡張ポルフィリン / アニオン認識 / 非線形光学応答 / 2光子吸収断面積 / 芳香族性 |
Research Abstract |
ヘキサフィリンに代表される芳香族性を示す環拡張ポルフィリンが非常に大きな2光子吸収断面積を示すことを明らかにした。2電子還元したヘキサフィリンでは、2光子吸収断面積の値が大幅に低下することから、こうした非線形光学特性は分子の芳香族性と関連があることがわかった。また、ヘキサフィリンに10族の金属イオンを反応させたところ、金属-炭素結合を持つ錯体が生成することがわかった。この研究の展開として、金(III)イオンを反応させたところ、平面長方形構造のヘキサフィンの内側に金イオンが一個または2個配位した金属錯体が生成することを発見した。これらの金属錯体は水素化ホウ素ナトリウムによる還元やDDQによる酸化により2電子還元、酸化は可逆に変換できることも見いだした。更に、驚くべきことに、これら金錯体の還元体では、反芳香族性が発現していることが明らかとなった。また、ヘキサフィリンへのオルトキシリレンのDiels-Alder反応をおこなったところ、反転したピロールのベータ位に付加が進行することがわかった。この反応を利用して、ビスオルトキシリレンを反応させたところ、ゼット型の構造を持つヘキサフィリン2量体を合成できることがわかった。これらの付加体の構造は単結晶X線解析により決定した。これは、環拡張ポルフィリンの最初の付加環化反応の例である。メゾーアリール置換環拡張ポルフィリンは構成ピロールの増加により平面からずれ、ゆがんだ構造になることが分かっている。これらの構造のゆがみを抑え、大きな環での芳香族性の発現を目指し、分子内をフェニレン架橋した環拡張ポルフィリンの合成を試みた。デカフィリンの場合、部分的に芳香族性を示す分子と非芳香族性の分子の合成に成功した。これは、容易に2電子酸化還元により相互変換できる。また、オクタフィリンの場合は、環状構造生成の歪みが大きいために、中央の1,4-フェニレン架橋がキノジメタン構造となることがわかった。更に電子不足のヘキサフィリンによりヒドロキノンやフェノールが効率よく酸化できることも見いだした。ヘキサフィリンのN-縮合反応やビシナル2塩素化反応も見いだした。これらの生成物の構造はすべて結晶構造解析により明らかにした。更に、ヘキサフィリンに銅(I)イオンを作用させたところ、2つの反転ピロールが同時に転位して2重N-混乱ヘキサフィリンが得られることを見いだした、これらの二重N-混乱ヘキサフィリンは2個の金属イオンを効率よく配位する優れたリガンドであることも実証した。
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Research Products
(6 results)