Research Abstract |
ポリマー官能基を持ち,タンパク質と親和力のあるイオン液体(IL)を分子設計し,このイオン液体で酵素をコーティングすることで,水溶液中でしか働かない酵素を様々な有機溶媒中で触媒活性を発揮できるように安定化する酵素活性法を開発することを目的として研究を行った.その結果,タンパク的に純粋な試料が入手容易なリパーゼPS, Candida rugosaリパーゼ,アルカリプロテアーゼSubtilisinをイオン液体コーティングして安定化効果,活性化効果を調べた結果,イオン液体コーティングにより有機溶媒中の安定性が顕著に向上することがわかった.この加速効果の起源を探るためイオン液体コーティング酵素のSEM像を観察した結果,イオン液体コーティングで表面積が大幅に増大していることがわかった.また,イオン液体コーティングした酵素のMALDI-TOF MS分析を行い,イオン液体と酵素の複合体が生成していることを明らかにした. さらに,活性化効果の高いアルキルPEG硫酸イオン液体の分子設計を検討し,イミダゾリウム環に側鎖としてL-プロリンメチル基を連結したカチオンを持つアルキルPED硫酸イオン液体を合成した.このイオン液体でリパーゼをコーティングするとさらに反応加速が観察され,従来,申請者が見いだしていたアルキルPEG硫酸イミダゾリウム塩より,エナンチオ選択性を保持したまま5倍から10倍の反応加速効果が得られることがわかった.また,このイオン液体でGeotrichum candidum由来の酸化還元酵素をコーティングすると,pH7.0 MES buffer中で,アセトフェノンの不斉還元速度が顕著に加速されることがわかった.コーティングしない場合,35℃,25時間の反応で収率80%のところ,このイオン液体でコーティングした酵素を用いると,わずか1時間の反応で,収率91%,>99%eeの光学純度で還元体である(S)-1-フェニルエタノールが得られた.
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