2007 Fiscal Year Annual Research Report
固体表面での水素のオルトーパラ転換における磁気効果の解明
Project/Area Number |
17360017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福谷 克之 The University of Tokyo, 生産技術研究所, 教授 (10228900)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 達雄 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (60011219)
WILDE Markus 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (10301136)
笠井 秀明 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00177354)
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Keywords | 水素 / 核スピン / エネルギー散逸 / 磁気効果 / 物理吸着 |
Research Abstract |
本研究の目的は,固体表面での水素のオルトーパラ転換における磁気効果を調べ、オルトーパラ転換機構を解明することである.昨年度までに、超伝導電磁石を組み込んだ超高真空試料処理装置と強磁場下でのオルトーパラ転換を測定するためのレーザー誘起蛍光法の開発を行った。本年度は、Cr2O3単結晶表面における転換時間の外部磁場効果と銀表面における磁性不純物効果に関する研究を行った. Cr2O3試料セル中に純オルト水素を導入し、その後のオルト・パラ水素濃度の時間変化を測定した。T=44.5Kにおいて,外部磁場強度BをB=0,1,3Tと変化させたときの転換時間は、それぞれ108,108,116minであることがわかった.転換の理論によると、回転エネルギーが電子系(磁気系も含む)に散逸する場合は転換速度に磁場依存性が現れ、格子系の場合は磁場依存性が現れないことが示されている.今回の実験結果から、Cr2O3単結晶表面での転換では、回転エネルギーは格子系に散逸していると結論できる.温度依存性に着目すると、40Kでの転換時間は92min,300Kでは測定時間内に有意な転換は見られなかった.水素分子の吸着エネルギーを30meVと仮定し、表面滞在時間補正を行うと、7Kでの転換時間は約10-3sとなる.本研究初年度の研究で、Cr2O3表面、7Kでの転換時間は200sであることがわかっている.このことは、吸着における静的な転換に加えて、動的な転換機構が作用していることを意味している. Ag表面に磁性体である酸素分子を導入し,その表面でのオルトーパラ転換時間を測定した.清浄な銀表面で610sであった転換時間が,酸素吸着量を増加させるに従って減少することを見いだした.分子の拡散を考慮したモンテカルロシミュレーションを行い,酸素近傍での転換時間が8.2sであることを明らかにした.
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Research Products
(4 results)