Research Abstract |
本年度は最終年度であり,次の4項目の研究を実施し,目的の達成を図った。 1.配線材料と保護膜材料・厚さの組み合わせ配線の損傷予測A1積層配線に対しTEOSとポリイミドの保護膜材料を組み合わせた配線を想定し,数値シミュレーションによるEM寿命予測を行った。同じ保護膜厚さに対してポリイミド保護膜配線の方が長寿命となる結果を得た。また保護膜厚さの違いによるしきい電流密度の変化についても検討した。保護膜材料,厚さの異なる配線の損傷予測を初めて実施した。 2.実験による予測結果の検証加速通電実験を実施し,専用に作製した試験片でのEM損傷の発生を確認できた。発生時間の長期化と発生確率が低いことから,予測結果の十分な検証に至らなかった。 3.組合せ配線構造体の機械的特性評価A1配線に対しTEOS,ポリイミド,さらにSiNを保護膜とした組み合わせ配線を作製し,ナノ押し込み試験を実施した。弾性率はSiN,TEOS,かなり離れてポリイミドの順に小さくなった。また押し込み量の大きな試験を行い,保護膜が破壊に至る押し込み深さを比較したところ,SiN,TEOSの順に深くなり,ポリイミドは破壊を確認できなかった。よって,この順に付着強度が大きいことが示唆された。さらに,Cu配線の組み合わせ配線を作製し,試験の実施を試みた。 4.損傷予測パラメータと機械的特性の関連抽出シミュレーションに用いたEM特性定数とナノ押し込み試験より得た機械的特性を比較検討することにより,保護膜の弾性率が小さく,配線と保護膜の付着強度が大きいほうが,「ボイド形成に至る臨界の原子濃度」が大きくなることがわかった。これより配線の長寿命化には,弾性率が小さく,配線との付着強度が大きい保護膜との組み合わせが有効であることが示唆された。今後,機械的特性と「有効体積弾性率」の関連性を考慮した長寿命化の検討を行う予定である。
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