Research Abstract |
パッシブ領域におけるフォトニック結晶ファイバの広帯域性,分散制御性,高非線形性に関する極限性能を明らかにするとともに,アクティブ領域における高度利用について調査研究を行った。特にパッシブ領域においては,単一モード特性を維持しつつ,どこまで分散制御性及び高非線形性を引き出すことができるかを明らかにした。また,非線形フォトニック結晶ファイバの伝送特性を評価するための解析的近似理論を提案した。複雑な断面構造を有するフォトニック結晶ファイバを,等価的に通常の均一コア光ファイバに置き換えることによって,従来の非線形光ファイバに対して開発された解析的近似理論を非線形フォトニック結晶ファイバにそのまま適用することを可能とした。この方法によれば,非線形フォトニック結晶ファイバの伝送特性を記述する基本量である実効屈折率と実効断面積を,数値計算に頼ることなく,容易に算出できる。実際に,非線形フォトニック結晶ファイバの伝送特性の光パワー依存性を解析し,フルベクトル有限要素法の基づく精密計算による結果と比較することによって,本研究で提案した解析的近似理論の妥当性を検証した。さらに,非線形フォトニック結晶ファイバの光通信システムへの具体的な応用としてラマン増幅器を取り上げ,励起光として1波のみを使い,Sバンドで動作する広帯域分散補償フォトニック結晶ファイバの最適設計法を考案した。この最適設計法では,モード解析ツールとしてフルベクトル有限要素法を採用し,これに遺伝的アルゴリズムを組み合わせている。設計されたフォトニック結晶ファイバは,-264ps/km/nmから-1410ps/km/nmまでの大きな負の分散値を有し,負の分散スロープを呈するもので,Sバンド全体で分散補償が可能な単一モードファイバになっている。ゲインリップルは,50nmの帯域にわたって±0.46dBで,二重レイリー後方散乱係数も-59.8dBと小さな値になっている。
|