Research Abstract |
我が国は地質的に崩れ易い斜面を多く抱え,また豪雨,台風そして地震といった天災も数多く発生することから,膨大な数の崩落および崩壊の危険性のある斜面を抱えている.危険な状態の斜面全部に充分な対策を施すことは,現在の限られた予算の中では不可能であり,効率的に斜面防災を整備していく戦略の立案が必要となっている.斜面災害の多くは明確な前兆現象があったとしても微小な物理変化であるために高精度での計測が要求され,それを広範囲に行おうとするとコストが高くなってしまい,また精度と共に計測技術に熟練を要するようになるなどの理由のために,充分な観測網が構築できていない.本研究は,このような背景を鑑み,安価で取り扱いが簡便,さらに広範囲を網羅しながらも,リアルタイムに高精度で斜面の動きをモニタリングするための技術を提供するためのものである. 本年度は,300万画素クラスの解像度を持つデジタルカメラによって撮影したデータを用いて,100mの距離からmm以下の変位を検出することを可能とする解析プログラムを構築した.対象とする斜面の上に標点となるターゲットを設置し,様々な位置よりデジタル画像を撮影し,その危険箇所を抽出した.広範囲な対象であっても写真に写しさえすれば,その変位の面的分布を求めることが可能であるという本計測は,特に斜面崩壊や地すべりといった災害に対処するためのモニタリング技術として有用であることを示した.また,電波位相差を利用した計測技術については,小型の発信および受信機を開発し,それを対象物に設置し,同じく小型の複数の受信機で当該発信機からの電波を受信し,その際の各受信機が受信した電波の位相差を解析することにより,GPSと同じ原理で,対象物の動きをリアルタイムで検知することが可能となるシステムの開発を行った。
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