Research Abstract |
平成17年度の研究では,日中間貿易構造と自由貿易構造下(財移動の自由,労働移動の自由,資本移動の自由)における環境制約付き国際間産業連関型最適化問題を解き,京都目標値を達成するためにはどのような国際分業パターン,資源配分パターンが望まれるのか定量的に解析した.その結果,CO2排出量を京都議定書目標値に規制することによって,社会的に効率的な資源再配分メカニズムを通して,1,090〜2,189億ドル(日本円で約10〜20兆円)程度の活動レベルが日本から汚染避難国である中国に移ることが明らかとなった.日本にとってはその分経済損出につながるが,京都議定書目標値を考慮するとき日本の環境効率性は大きく改善されている結果となった.また興味深いことに,日本からの生産活動の移動に伴い,汚染避難国である中国の環境効率性は低くなることが予想されるが,分析の結果,日本では,比較優位構造下でCO2排出量を京都議定書に制限したときの環境効率性が現状値から最低でも405(ドル/トン-c),最大で457(ドル/トン-c)上昇することが判明した.この結果は,逆に現状から31,356万トン-cの排出量のときGDPを1,433億ドル(日本円で14兆円程度)押し上げる効果があることを示していた.また,中国においても環境効率性は現状値から最小でも346(ドル/トン-c),最大で600(ドル/トン-c)上昇しており,自由貿易を通して,中国の環境効率性が大幅に改善されている結果となった.次年度では,17年度で定式化された最適化問題に日本から中国への技術移転メカニズムを組み込み,技術移転効果の影響を評価する.具体的には,日本の優れた当該生産技術(例えば,製鉄技術)を中国に移転した場合の技術係数行列を想定するだけでなく,技術距離と価格差の関係を補完し,移転伝搬過程の影響についても解析的に検討する予定である.
|