Research Abstract |
もしも,ひとり一人の"移動"(モビリティ)が変わるのなら,つまり,交通行動における「行動変容」が生じるのなら,それら諸問題は,抜本的に解消することが期待される.この様な期待のもとで実施する交通施策として,人々の移動(モビリティ)に関する"行動変容"を促すマネジメント施策である「モビリティ・マネジメント」(mobility management;略称,MM)が近年提案されている.ここに,MMは次のように定義されている(藤井,2004).「一人一人のモビリティ(移動)が,社会にも個人にも望ましい方向注)に自発的に変化することを促す,コミュニケーションを中心とした交通施策」(注:例えば,過度な自動車利用から公共交通・自転車等を適切に利用する方向). この交通施策は,社会心理学の知見に基づいて構築された複数のコミュニケーション技術を基本として,人々の行動変容をもたらすことを目指す施策である.ソフト的交通施策という意味でTDMと類似するが,コミュニケーションや各種マネジメント施策を通じて,「自発的な行動変容」を促すことを目指している点が大きな相違点である. ただし,MMは,その基本的かつ理論的な概要は提案されているものの,実務的に大規模展開を図るには,検討すべき技術的な課題(どのような人々に対しては,どのようなコミュニケーションが適切か?どのように人々に接触していくのが効率的か?等)が数多く残されている.本科研研究では,これまでに蓄積された「心理学的知見」をベースに(藤井,2003),これまでよりもより大規模(数千〜1万世帯程度)な世帯を対象としたMMを実施することを通じて,本格的・実務的にMMを進めるために必要となる実践的知見を得ることを目指す.そして,日本の実交通行政に直接的に貢献できるマネジメント施策のあり方を,現実的な形で提案することを究極的目的とする.
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