Research Abstract |
本年度は,前年度までのパイロット的モビリティ・マネジメント(MM)施策によって得られた知見を基にして,MMの実務的な展開に向けての課題やMM施策の効果を明らかにすることを目的として,居住世帯,職場,学校において,社会実験的MMを実際に推進した.その際,本格的MMの実施に資する実務的知見を得るために,数千〜一万の中規模程度の被験者数を確保した.その結果,居住世帯,職場,学校のそれぞれで進めたMM施策において,従来よりも施策規模を拡大した場合においても,自動車利用の減少効果,及び,公共交通利用の促進効果が存在することが確認された.さらに,MM実施後の継続的な調査によって,MM施策において長期的効果が存在することも示された. また,全国各地において,MMの実験的な取り組み事例が蓄積される中,これらの事例を収集し,体系的に整理するとともに,英国や豪州における先進的事例との比較検証を実施した.その結果,今後,我が国において大規模なMM施策を展開する上では,MMの効果計測手法を共通化することが重要な課題であることが示唆された. そこで,MM施策の包括的モニタリングならびに施策の横断的・総合的な評価を目的として,我が国におけるMM事例をとりまとめたデータベースを構築した.そして,MMの中でも特にトラベル・フィードバック・プログラム(TFP)に着目し,2005年までに国内で実施された31事例を対象として,TFPの効果の客観的な定量評価を行った.これら複数事例の統一的評価にあたっては,新たに「自動車利用変化指標」「公共交通利用変化指標」を提案することによって,人々の交通行動変容を測る効果計測指標を一元化した.その結果,TFPの実務的効果の平均は,自動車利用が約19%の削減,公共交通利用が約32%の増加であることが分かった.
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