2005 Fiscal Year Annual Research Report
DNAマイクロアレイを用いた環境汚染化学物質の多指標型毒性評価システムの開発
Project/Area Number |
17360250
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡部 聡 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (10253816)
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Keywords | ヒトDNAマイクロアレイ / 遺伝子発現解析 / 毒性評価 / バイオアッセイ |
Research Abstract |
本研究は、(1)特定の有害作用(タンパク変性、酸化ストレス、細胞膜障害性、DNA障害性等)を持つ化学物質存在下において、特異的に発現するヒト遺伝子(群)を、DNAマイクロアレイ技術を用いて一挙に網羅的に探索・検出すること、(2)、(1)で選定された有害作用に特異的な発現遺伝子を標的とした多指標型プロモーターアッセイ系を確立し、環境水の毒性評価のためのより体系化された迅速・簡便・安価なバイオアッセイシステムを開発することを目的としている。 実験の結果、DNAチップを用いた遺伝子発現解析の結果より、HepG2は化学物質暴露によって明らかな遺伝子発現変動を示し、そのパターンには化学物質によって明瞭な差異が認められた。さらに、それぞれの発現遺伝子を比較解析することにより、タンパク質変性作用(フェノール、SDS)および酸化ストレス作用(過マンガン酸カリウム、過酸化水素)に特徴的と考えられる30前後の遺伝子群を絞り込んだ。これら遺伝子の機能分類の結果、タンパク質変性作用では細胞内シグナル伝達および細胞分裂、酸化ストレス作用ではDNA修復および過酸化物質処理に関与する遺伝子が含まれており、これらの遺伝子が両作用を反映するマーカー遺伝子群として有用である可能性が示された。同様の手法をカドミウムとニッケルに適用した結果、上記の遺伝子のうち、酸化ストレスに関与するマーカー遺伝子群の顕著な発現が両重金属に共通して認められた。また、カドミウムについてはタンパク質変性に関与するマーカー遺伝子群の発現も確認された。さらに、重金属特異的遺伝子として、金属結合タンパク質であるメタロチオネインおよびZinc finger proteinの特徴的な発現が認められた。これまでに生体における重金属の毒性機序は十分に明らかとなってはいないが、細胞内の酸化反応を攪乱し、酸化ストレスを生じる可能性が強く示唆されている。すなわち、本研究で確立した手法により、重金属をその毒性レベル(酸化ストレスマーカー遺伝子の発現)及び物質レベル(重金属マーカー遺伝子の発現)で評価可能であることが示された。今後、他の毒性作用(DNA障害性等)や物質(有機溶媒、界面活性剤等)について同様の検討を行うことにより、総合的な多指標型バイオアッセイの開発が可能になると考えられる。
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