Research Abstract |
霞ヶ浦4地点,諏訪湖1地点,木崎湖1地点でダイバーが潜水して,深さ1m程度のコアサンプルを数本づつ採取した.採取したサンプルは2cm間隔でスライスし,各種容器に分けた.湿サンプルに対して,含水率,比重,粒径分布,強熱減量,見かけ密度を測定した.また,凍結乾燥したサンプルに対してリン,窒素,有機炭素,PAHs濃度を測定した.さらに,熱乾燥したサンプルに対して,137Cs,210Pbを測定し,その鉛直分布から堆積速度に関する情報を得た. 霞ヶ浦,諏訪湖の過去の堆積速度,濃度鉛直分布の結果と上記の結果を比較した.堆積速度に関しては,過去の報告値と大差ないことがわかった.一方,リンの鉛直分布について,時間軸を合わせて比較すると,霞ヶ浦の高浜入りの地点,諏訪湖ではピーク値が減少していることがわかった.こうしたリンは水中に移動し,湖外へ流出したことがわかった.特に諏訪湖では,ピーク濃度が大幅に減少していることがわかったが,その湖水濃度への影響は滞留時聞が短いため,大きくは出ていないと推測された.また,こうしたデータをもとに,底質を含めてリン,窒素の物質収支が可能かどうかを,検討した.リンの場合,2年間程度の短期間では,底質変化の数値の変動が極めて大きく,物質収支を計算するのは難しいことがわかったが,20年程度の長期になると,湖内での堆積域をうまく推定できると物質収支を合わせることが可能であることを示した. 一方,PAHs濃度の鉛直分布を見ると,霞ヶ浦は1960年頃まで濃度が上昇した後に緩やかに減少する,宍道湖では1970年代にピークを持つ,なだらかな経年変化を示した.これに対して,諏訪湖,木崎湖では1960年代にピークを有するが,所々,激しい濃度低下を示す分布を示した.また,発生源解析を行った結果,近年に堆積したと考えられる底泥中PAHsの大部分は自動車由来であることがわかった.
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