2006 Fiscal Year Annual Research Report
ペロブスカイト薄膜における特異的準安定ナノ構造と電子輸送特性に関する研究
Project/Area Number |
17360324
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
藤本 正之 静岡大学, イノベーション共同研究センター, 教授 (60372520)
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Keywords | 酸化物薄膜 / 電子輸送特性 / ナノ構造 / 高速抵抗変化 / モット転移 / TEM / EELS |
Research Abstract |
前年度は、金属導電性TiNの表面を低温オゾン酸化させることで、数ナノメートルのTiO_2酸化膜を形成して、これが超高速のバイポーラパルス抵抗変化を示すことを明らかにした(JJAP Exp.Lett.45、L310(2006))。本年度はこのナノメーターオーダーの酸化膜の精密な構造解析と動作原理検証とを、高分解能TEMとEELSを用いて行った。 TiNのTiN_6八面体は歪みを伴わずにOhで表記される高い対称性を有している。これに対しTiO_2ルチルのTiO_6八面体は、わずかに斜方晶へと歪んでおり(D2h)、アナターゼTiO_6八面体は、斜方晶よりもさらに歪んだ構造となっている(D2d)。すなわちこれらの対称性は、Oh、D2h、D2dの順に対称性が低下している。TiNのTi_<3d>軌道はその部分対称性を反映してt_<2g>とe_gに分かれる。それゆえ2pスピン-軌道相互作用は2p_<3/2>(L_3)と2p_<1/2>(L_2)とに分裂する。同様にルチルとアナターゼではその対称性の低下を反映したクリスタル-フィールド相互作用により3d軌道の更なる分裂を誘起する。ルチルもアナターゼも同様にL_3とL_2のスプリットが現れるが、アナターゼのTiサイトがより歪んでいることを反映して、L_3の二番目のピークがhigh-energy shoulderとなる。2.5nmの厚さの酸化膜のEELS/ELNESプロファイルはアナターゼであることを示し、アナターゼのMott転移臨界ドナー濃度がルチルよりも遥かに低いことから、観測された高速の抵抗値変化はアナターゼナノ層への電子の注入・抽出とそれに伴うO^<2->のマイグレーションにより動作しており、stufEed barrierとも称される粒界に酸素を溜め込む機能を有するTiNがO^<2->のreservoirの役割を果たしていることで機能していることを明らかにした(Appl.Phys.Lett.89, 223509(2006))。 さらにPr_<0.7<Ca_<0.3>MnO_3薄膜の結晶性と抵抗値との関係を体系的に調べ、高抵抗を示すアモルファス状態のPr_<0.7>Ca_<0.3>MnO_3薄膜のみが、mono-polar抵抗スイッチングを示すことを明にし、従来の結晶性Pr_<0.7>Ca_<0.3>MnO_3薄膜の抵抗スイッチングが、上部電極の酸化または、記録保持性の無い半導体/金属界面のエネルギー障壁に関わるものであることも明らかにした(Appl.Phys.Lett.89, 243504(2006))。
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Research Products
(7 results)