Research Abstract |
茎の太さや長さ,枝分かれ,葉の大きさや着き方など,植物の力学的安定性と受光体制に係わる外部形態をアーキテクチャという。アーキテクチャの研究を進めることよって,資源の有効利用,効率的作物の育種・育成のための基礎的知見が得られることが期待される。 植物は,与えられた光環境のなかで,光を効率的に受けることができるように葉を展開する。このことを孤立個体と群落状態の個体において検証するために,一年生草本シロザを用いて,植物の育成実験を行った。孤立個体と群落個体のアーキテクチャを記載し,植物の成長を解析した。葉面積の分布から,それぞれの受光量を算出した。地上部は主軸,分枝を含めて,節間・葉柄・葉身(モジュール)を単位にして成長をする。成長をモジュールごとに計測することにより,孤立個体と群落個体の成長と分枝様式および資源利用の違いを調べた。 孤立個体が吸収した光量は群落個体の約5倍であったが,植物の乾物成長量は2倍に過ぎなかった。孤立個体が2倍成長したことは,孤立個体には群落個体の2倍の窒素が与えられたことによって,見かけ上,完全に説明された。群落個体は孤立個体の1/5の光しか吸収しなかったが,これを補償するメカニズムがはたらいたということになる。葉への乾物の分配割合は孤立個体と群落個体とで大きな差はなかったが,群落個体は薄い葉をつくり,相対的に大きな葉面積を展開していた。群落個体は総葉面積に占める主軸葉の割合が大きく,分枝は抑制されていたが,孤立個体は分枝葉の割合が大きかった。また,群落個体は茎への投資が,孤立個体は根への投資が多かった。群落個体の個体重は孤立個体の半分であったが,草丈は2倍で,群落個体は力学的安定性を犠牲にして,茎を伸長させ,葉を高い位置に展開していた。
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