2005 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫類のベーサル・クレードの比較発生学的再考築-カマアシムシ目の発生学的研究-
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17370030
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
町田 龍一郎 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 助教授 (50199725)
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Keywords | 比較発生学 / 昆虫類 / 内顎類 / カマアシムシ目 / 欠尾類 / 胚膜 / 機能分化 / 高次系統 |
Research Abstract |
「内顎類-外顎類システム」(「内顎類[=欠尾類(=カマアシムシ目+トビムシ目)+双尾類(=コムシ目)]+外顎類[=単関節丘類(=イシノミ目)+双関節丘類(=シミ目+有翅昆虫類)]」と表記できる)は昆虫類の高次系統として広く受け入れられてきたが、近年のさまざまな分野からのチャレンジは、「内顎類」のステータスや構成群の類縁に関して、問題点を指摘する。しかしながら、これらのチャレンジ間の議論は定まることもなく、また、最近の分子系統学的アプローチも、分岐が深くしかも極めて短期間に放散したと考えられる昆虫類のベーサル・クレードには、有効な議論を発展できずにいる。本研究の目的は、昆虫類の最ベーサル・クレードと目されるカマアシムシ目の発生学的知見を初めて明らかにすることにより、昆虫類のベーサル・クレードを比較発生学的立場から明確に再構築することにある。 本年度はカマアシムシ目の胚発生の概略を明らかにすることを目指し、ほぼ目的を果たすことができた。すなわち、カマアシムシ目は、全割型の卵割、長大な初期胚帯、単純な胚運動、3顎節背板に由来する内顎口(口褶)などの発生学的特徴をもつことを明らかにした。そしてカマアシムシ目の発生においてもっとも注目すべきことは、胚膜(漿膜)が退化せずに背板形成に参加する、すなわち体形成能を保持している点である。この特徴はより原始的な節足動物、つまり多足類や甲殻類と共通するものであり、昆虫類の系統においては、胚膜はこのような体形成能をすでに失っている。このカマアシムシ目の胚膜の特徴を、私たちが発展させてきた「胚と胚膜の機能分化の進化的変遷」のシェマに組み込むと、昆虫類の体系はテンタティブに「多足類/甲殻類+カマアシムシ目(=昆虫類の一群)+大部分の昆虫類《=トビムシ目+【コムシ目+外顎類[=単関節丘類(=イシノミ目)+双関節丘類(=シミ目+有翅昆虫類)]】》」と改編される。ここにおいては、「内顎類」だけでなく「欠尾類」、さらには「昆虫類」も多系統群である。 これらの成果は、二編の国際誌(原著論文1編と総説1編)(印刷中)、また、第二回国際昆虫系統学会議において招待講演として発表された。
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Research Products
(2 results)