2006 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物のゲノムDNAのメチル化調節機構に関する研究
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17370047
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田嶋 正二 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (50132931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末武 勲 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教授 (80304054)
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Keywords | DNAメチル化 / DNAメチルトランスフェラーゼ / ヌクレオソーム / ヒストン / Dnmt1 / Dnmt3a / Dnmt3L / PCNA |
Research Abstract |
高等動植物ゲノムのシトシン塩基は生理的な条件下でメチル化修飾を受ける。この修飾は遣伝情報発現に抑制的に働く。DNAメチル化を書込むDNAメチルトランスフェラーゼには、3つの遺伝子、Dnmt1、Dnmt3a、Dnmt3bが同定されている。本研究計画では、組換型DNAメチルトランスフェラーゼを用いて、触媒特異性を解析し、ゲノムDNAのメチル化の調節機構を明らかにすることを目指している。本年度は以下の点を明らかにした。 マウス雄の16-18日胚生殖細胞ではゲノム全体のメチル化が再構築される。この時期の生殖細胞では、Dnmt3aのアイソフォームであるDnmt3a2とDnmt3Lが非常に高い発現をし、両者がゲノムのメチル化模様の形成には必須である。マウス16.5日胚の雄性生殖細胞を単離して、Dnmt3a、Dnmt3a2、Dnmt3Lを特異的な抗体を用いて定量した。その結果、Dnmt3aは検出限界以下で、専らDnmt3a2とDnmt3Lが同程度発現していた。また、組換型Dnmt3a2のDNAメチル化活性をDnmt3aと比較したところ、Dnmt3a2はDnmt3aと異なり、生理的な塩濃度下ではほとんどDNAメチル化活性を示さなかった。しかし、Dnmt3Lの存在下で有意な活性を示した。Dnmt3a2を専ら発現している雄性生殖細胞でゲノムメチル化にDnmt3Lが必須なのは、Dnmt3a2が生理的な塩濃度条件下で活性を発揮するためであることが明らかとなった。 Dnmt1はアミノ末端でPCNAに結合して、複製時にメチル化模様を維持する。我々は、PCNA結合配列を含むアミノ末端(1-248)が領域構造をとること、そして、(119-197)にATに富むDNAの狭い溝に結合する活性があることを明らかにした。このDNAへの結合はPCNA結合活性と競合する。この結果は、Dnmt1が複製期以外の時期、あるいはPCNAと結合していないときには、Dnmt1がATに富む配列に偏在することを示している。このDNA結合活性は、メチル化修飾を受けるペリセントロメア領域などCpGアイランド以外の領域や、PCNA非依存的な塩基除去修復を受ける領域で、メチル化模様を維持するために寄与していると推察される。 以上の成果は、ゲノムメチル化状態の創生と維持の分子基盤の理解に資するものである。
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Research Products
(4 results)