2006 Fiscal Year Annual Research Report
NMR法による砂漠化に適応した作物の耐性機構の解析
Project/Area Number |
17380013
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
井上 眞理 九州大学, 大学院農学研究院, 教授 (60091394)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鄭 紹輝 佐賀大学, 海浜台地生物環境研究センター, 助教授 (90253517)
島崎 研一郎 九州大学, 大学院理学研究院, 教授 (00124347)
湯淺 高志 九州大学, 大学院農学研究院, 助教授 (40312269)
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Keywords | 水の分子動態 / 乾燥耐性 / 種子 / ササゲ / NMR緩和時間 / ABA |
Research Abstract |
近年、地球規模における砂漠化に対応した作物生産は大きな課題であり、耐性作物の栽培や育種に多くの研究が取り組まれてきた。砂漠で栽培可能な作物は、優れた乾燥耐性を有す一方、その生産性は必ずしも高くない。本研究では、作物の乾燥耐性機構について解明し、作物増収へのヒントを得ることを目的とする。サハラ砂漠南部のサヘル地域において広く栽培されているササゲ(Vigna unguiculata L Walp)は、乾燥耐性に著しく優れていることが知られている。本研究では、他のマメ科作物としてラッカセイ、インゲンマメ、ダイズと比較することにより、^1H-NMRおよび光合成関連パラメータおよびABA関連遺伝子の発現と乾燥耐性との関係について検討した。 土壌含水率の低下に伴い、ササゲの葉の蒸散速度、水蒸気コンダクタンスおよび光合成速度は、他の3種のマメ科作物と比較し、ストレス処理開始のごく早い時期に顕著な低下がみられた。この乾燥初期における急速な反応により、蒸散による水分のロスを最小限に抑えることを可能にしていると考えられる。一方、葉の含水率および水の分子動態を示すNMR緩和時間(T_1、T_2)は、ストレスが進行するにつれて維持またはやや上昇し、光合成関連パラメータとは逆の傾向がみられた。ABA合成の律速酵素であるNCEDは、ダイズよりもササゲの根で6日ほど早い時期に発現がみられ、ZEPではササゲの根においてのみ発現した。以上のことから、ササゲは根でZEPを活性化し、NCEDの合成を促進することにより気孔の閉鎖を誘導し柔からの水の損失を防いでいることが明らかになった。乾燥ストレスの後の再潅水後には、上述の変動パラメータはすべて回復していたことを確認し(井上ほか2006植物学会講演要旨;今村ほか2007日本作物学会紀事)、現在、論文を準備中である。 また、究極の乾燥耐性をもつ器官として種子を対象とした研究も併せて行った(Funaba etal.,2006;Ishibashi et al.2006;Ishibashi and Iwaya-Inoue 2006)。
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Research Products
(6 results)