Research Abstract |
トマトにおいて過度の栄養成長は生殖成長を阻害することが知られているが,これらの現象の生理的,遺伝的背景については明らかになっていない。そこで,トマト栽培種と近縁野生種のS.pimpinellifoliumの雑種第一代に栽培種を戻し交配したBC_1F_3世代114系統を作出し,量的形質遺伝子座(QTL)解析によって栽培季節と遺伝子の交互作用が開花時期や栄養成長に及ぼす影響について調査した。調査した形質は,開花時期,第一花房下葉数,最大葉長,腋芽数生体重,草丈の6形質である。その結果,作季の違いがトマトの開花時期に影響を及ぼすことが明らかになったので,今年度は夏にBC_1F_6105系統を昼30,夜25℃(30/25℃)と23/18℃の条件下で20日間栽培した後,ハウスに移して開花まで栽培した。本実験では,開花までの日数に関するQTLは検出されなかったが,第一花房下葉数に関ずるQTLが第2,3,7染色体上に検出された。これらQTLの中,第7染色体上のQTLは低温でのみ検出された。この結果は,低温が栄養成長から生殖成長への転換を早めることと一致した。また,養分欠乏下では栄養成長の期間が延び,開花が遅れることが報告されているので,施肥量を変えて秋にBCIF6系統群を栽培し,栄養条件の違いがQTLに及ぼす影響を調べた。養分欠乏下で開花は8-10日遅くなり,第一花房下葉数は施肥量の影響を受けなかったが,最大葉長は養分欠乏下で50%低下した。検出された24のQTL中6つが開花時期に関するQTLで,養分供給が十分な場合,第2,第3染色体上のQTLが開花に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。さらに,開花に関連するQTLは最大葉長,花房下葉数,草丈などのQTLと同一遺伝子座に座乗していることが明らかになった。
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