2005 Fiscal Year Annual Research Report
薬剤耐性イネいもち病菌の網羅的ハイスループット遺伝子診断技術の開発
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17380032
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
石井 英夫 独立行政法人農業環境技術研究所, 化学環境部, 研究リーダー (20343824)
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Keywords | イネいもち病菌 / 薬剤耐性菌 / 遺伝子診断 / メラニン合成阻害剤 / ストロビルリン系薬剤 / ベンゾイミダゾール系薬剤 / PCR-Luminex法 / PCR-RFLP法 |
Research Abstract |
イネで長期残効型薬剤の育苗箱処理が広く普及し、水田における薬剤防除回数の削減に大きく貢献してきた。しかし最近、耐性菌の出現によって脱水酵素阻害型メラニン合成阻害剤(MBI-D剤)のいもち病防除効果が各地で低下している。また、ストロビルリン系薬剤(QoI剤)についても、今後いもち病でも耐性菌の発生が危惧される。そこで本研究では、MBI-D剤、QoI剤、さらにはイネの種子消毒に汎用されてきたベンゾイミダゾール剤に対する耐性菌を、網羅的かつ迅速に検出できる新しい遺伝子診断技術を開発する。初年度は、MBI-D剤耐性菌におけるシタロン脱水酵素遺伝子の変異配列(コドン75:ATG)をシークエンシングと制限酵素処理によって確認した。耐性菌と感受性菌(野生型GTG)における1塩基の違いに基づいて2種類のDNAオリゴプローブを作製し、Luminex法によって耐性菌と感受性菌を識別する方法を確立した。本法では、培養菌体から精製したDNAのほか葉いもち病斑から直接抽出したDNAを用いても、耐性菌の診断が可能であった。薬剤無添加培地で40回継代を繰り返しても、耐性菌、感受性菌のシタロン脱水酵素遺伝子の塩基配列には変化がみられず、耐性変異は安定していた。PCRによってチトクロームb遺伝子を増幅し、シークエンシングや制限酵素処理を行ったが、QoI剤耐性変異をもつと思われる菌株等はこれまでのところ見つかっていない。また、アゾキシストロビンやアゾキシストロビン+没食子酸n-プロピル(QoI剤処理で活性が増大するalternative oxidaseの阻害剤)添加培地上の菌糸生育試験でも、感受性が低い菌株は検出されていない。チオファネートメチルに対してはすべて感受性菌と判断され、薬剤作用点たんぱく質β-チューブリンの遺伝子の塩基配列も野生型であった。今後も耐性菌のモニタリングを継続するとともに、QoI剤については部位特異的突然変異法などで耐性菌を作出して、遺伝子診断系の開発に役立てる。
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Research Products
(3 results)