2005 Fiscal Year Annual Research Report
重イオンマイクロビーム利用による昆虫の生体損傷修復機構の解析
Project/Area Number |
17380036
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
木口 憲爾 信州大学, 繊維学部, 教授 (50262697)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 孝治 信州大学, 繊維学部, 助手 (00293499)
小林 泰彦 日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, マイクロビーム細胞照射研究グループリーダー (50354957)
志田 敏夫 信州大学, 繊維学部, 助教授 (40162599)
佐藤 茂 日本医科大学, 中央電子顕微鏡施設, 助手 (10125073)
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Keywords | 昆虫 / 放射線 / 重イオンマイクロビーム / 傷害修復 / 再生 |
Research Abstract |
カイコ幼虫の造血器官に重イオンを照射すると一旦は崩壊するが、その後高い確率で再生する。これは、(1)照射後生き残った血球前駆細胞、または(2)循環している血球が造血器官再生に関与するという2つの可能性が考えられる。重イオン照射造血器官の再生メカニズムを追究するため、GFP遺伝子を組み込んだトランスジェニックカイコを用いた移植実験を計画し、本年度はその第一歩として、トランスジェニックカイコの特性を調査した。 3種類のトランスジェニックカイコ(A3GFP A3GFP2およびGAL4UAS)の特性を調査した。これらのトランスジェニックカイコはすべて体全体でGFPを発現することが確認されているが、より詳細に調査するとA3GFPおよびA3GFP2系統では血球および造血器官でGFP発現が(ほとんど?)無いことが明らかになった。一方、GAL4UAS系統は血球および造血器官内の血球前駆細胞においてGFPが観察された。一方、翅原基ではGFPは確認されなかった。また造血器官におけるGFP発現は幼虫期を通して確認された。これらから、移植実験にGAL4UAS系統のカイコが適すると結論した。 次に移植実験の有効性を検討した。正常カイコの体内にGAL4UAS系統のカイコから摘出した造血器官を移植し、数日後、体液中の血球を調査した結果、体液中を循環している血球の一部にGAL4UASの造血器官由来と考えられるGFP発現血球が認められた。これによりレシピエント幼虫の体内で移植造血器官が発育し血球を産出することが明らかになった。次に逆にGAL4UAS系統のカイコに正常カイコから採取した造血器官を移植し、数日後、移植造血器官を回収し、GFP発現を調査した。その結果、移植造血器官内にGFP発現は認められなかった。すなわち照射を受けていない造血器官を移植しても循環血球がその中に進入することはないことが示唆される。 以上の結果、移植実験の有効性が確認された。来年度は照射造血器官の移植実験を行い、再生に関与する血球の由来について明らかにする予定である。
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Research Products
(3 results)