2005 Fiscal Year Annual Research Report
植物の乳液・滲出液および局所・微細構造が担う耐虫防御の発現機構に関する研究
Project/Area Number |
17380040
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
今野 浩太郎 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫適応遺伝研究グループ, 主任研究官 (00355744)
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Keywords | 乳液 / 耐虫性 / クワ / カイコ / エリサン / 糖類似アルカロイド / 植物-昆虫間相互作用 / 1-デオキシノジリマイシン |
Research Abstract |
クワの葉がカイコ以外の昆虫に対して強い毒性と耐虫性をもち、それが葉の傷口から出る白い乳液に含まれる成分に起因することを解明した。 具体的には、 1.クワ葉はエリサン・ヨトウガ等のガ幼虫に対し毒性示すが、乳液を除去すると毒性は消失した。カイコはいずれの場合も良く成長した。乳液自体もエリサンに対して毒性で乳液がクワの耐虫性を担うことが判明した。 2.クワ乳液中には糖代謝酵素阻害剤で血糖値低下効果が報告される1,4-dideoxy-1,4-imino-D-arabinitol(D-AB1)や1-deoxynojirimycin(DNJ)等の糖類似アルカロイドが高濃度で含まれ、一部の個体群や品種では総計で乳液の1.5-2.5%(対乾重8-18%)に達した。この値はクワ組織全体からの従来報告値の約100倍である。 3.糖類似アルカロイドの乳液中濃度はクワ個体群・品種間で異なり、沖縄や本州の野生クワやその系統の品種で高くD-AB1が主成分であるが、中国野生クワ系品種「しんいちのせ」では低くDNJのみが存在していた。 4.D-AB1やDNJはエリサン幼虫に対し毒性・成長阻害活性を示したが、カイコに対しては全く示さなかった。 5.クワ乳液中には他にも高分子性の耐虫因子(毒)が存在することが示唆された。 以上、一般の昆虫が乳液中の毒成分のためにクワ葉を食べられない一方で、長い進化の過程でカイコがクワの防御機構を克服し適応したことが示された。本研究は1.人類になじみ深いカイコとクワの間に複雑な関係が存在することを初めて示した点、2.植物乳液が農薬・医薬等有用物質の宝庫であることを示した点等が高く評価され、米国科学アカデミー紀要に掲載された(Konno K. and Ono H. et al.,(2006)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103,1337-1341)。
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Research Products
(1 results)