Research Abstract |
Carbazole1,9a-dioxygenase(CARDO)は,カルバゾールに対し1,9a位への水酸化(核間二水酸化)を触媒すると共に,多環芳香族炭化水素に対しては分子末端への水酸化(末端二水酸化)老触媒する。さらに,芳香族化合物分子内のメチレン炭素やスルフィド硫黄への一水酸化も触媒する興味深い基質特異性を持つ。この基質特異性の分子メカニズム解明に向けて,昨年度までに,基質結合ポケット内で基質分子と直接相互作用する4つのアミノ酸に対する部位特異的変異体の作製,活性検定,構造解析による基質結合位置の決定を行つた。本年度は,in vitroでの活性検定系を構築LMichaelis-Mentenプロットから置接動力学定数を測定した。カルバゾールを基質した場合,野生型酵素はkmが測定域を超えて大きいもののkcatも測定不能なほど大きく,結果としで十分な反応性を有していた。一方,カルバゾール結合位置が変わり1,2位への末端水酸化を行う変異体酵素群は,親和性が向上する一方でKcatも測定可能なレベルまで減少したが,kcat/kmは野生型酵素より2桁以上向上していた。また,フルオレンの3,4位への,フルオランテンの7,8位への末端水酸化活性が向上した変異体について,各基質に対する動力学定数の測定を試みたが,基質の水溶性が低いことからin vitroでの反応系構築が不可能だった。そこで,酸素吸収を定量することで活性評価した結果,いずれも酸化活性が野生株より10倍程度向上していた。フルオランテンへの酸化活性が向上した変異体については酵素構造が決定されていたことから,基質の結合シミュレーションを行い,7,8位が活性中心に近接した配置で結合する確率が高いことが示された。上記の結果と,昨年度までの結果を統合して,基質特異性を決定する分子機構について考察を加えた。
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