2005 Fiscal Year Annual Research Report
野生動物による農林業被害発生機構の解明と被害防除法に関する実証的研究
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17380086
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
青井 俊樹 岩手大学, 農学部, 教授 (70125277)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松原 和衛 岩手大学, 農学部, 助教授 (70258804)
澤口 勇雄 岩手大学, 農学部, 教授 (80302058)
國崎 貴嗣 岩手大学, 農学部, 助教授 (00292178)
出口 義隆 岩手大学, 農学部, 講師 (40344626)
山本 信次 岩手大学, 農学部, 助教授 (80292176)
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Keywords | ツキノワグマ / 北上高地 / テレメトリー調査 / 行動圏 / 土地利用 / 奥羽山地 / 農作物被害防除 / 地域個体群管理 |
Research Abstract |
1.北上高地におけるニホンツキノワグマの行動圏と環境利用、被害発生の実態などについて、テレメトリー法を用いて調査した。2005年7〜8月に遠野市において5頭のクマの生け捕りに成功し、発信機を装着して放獣した。また前年に捕獲した1頭も加えて計6頭について冬眠穴まで追跡をおこなうことができた。そのうちの1頭は、人家の前の菜園に出没し、作物を加害した個体であった。その結果、いずれの個体も農地の広がる里地に隣接する山林を主たる利用場所としており、特に夏の間は多くの個体が、月間の行動圏が約200ha前後という非常に限られた範囲で活動していた。このように農地に近接した狭い範囲の山林を利用していたにも関わらず、明確な作物への加害行動は確認されなかった。また同じエリアを複数の個体が同所的に利用している場合と、他個体が侵入すると最初にいた個体がそこから離れる場合と、二つのタイプの土地利用の形態があることが示唆された。いずれの個体も10月下旬〜11月中旬にかけて行動圏を東側の山地に広げる行動が見られ、11月下旬〜12月中旬にはすべての個体がその山地に移動して冬眠に入ったことが確認された。これらのことから北上高地に生息するツキノワグマの特徴として、夏季の主たる利用環境が、里地に近接した山林部であるといえ、常に農地に出やすい状況の中で生活をしていると考えられる。したがって、これらの地域では、農地と山林の間の境界を明確にするために、ブッシュの刈り払い、農地周辺を電気牧柵で囲うなどの処置を日常的におこなうことによる被害防除対策が必要であることが示唆された。 2.奥羽山地についても、同様な調査をおこなった。2005年9月に雫石町小岩井農場上部のデントコーン畑で食害したと思われる個体を1頭捕獲し、岩手山山麓上部に移動してクマスプレーを噴射後放獣した。この個体は、放獣後は2度と農地に降りてきて食害することなく、逆に奥地に移動する行動を見せた。最終的には県境を越えて秋田県に移動し、捕獲地点から約25km離れた奥羽山地の脊梁部分で冬眠に入った。このことは、これまでの県単位のクマの保護管理対策では不十分で、異なる行政区域を含む地域個体群ごとの管理の必要性を示唆する結果となった。
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Research Products
(6 results)